MEDCHEM NEWS Vol.33 No.1
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* http://www2.riken.jp/dmp/こやす しげお理学博士。1978年東京大学理学部生物化学科卒業。ハーバード医科大学内科学准教授、慶應義塾大学医学部微生物学・免疫学教室教授、理化学研究所統合生命医科学研究センター長を経て、2015年より現職。慶應義塾大学名誉教授。日本免疫学会理事長。国際免疫学会連合(IUIS)理事、アジア・オセアニア免疫学会連合(FIMSA)会長など歴任。MEDCHEM NEWS 33(1)1-1(2023)1年4回2、5、8、11月の1日発行 33巻1号 2023年2月1日発行 Print ISSN: 2432-8618 Online ISSN: 2432-8626国立研究開発法人 理化学研究所 理事小安 重夫 国立研究開発法人理化学研究所(理研)は、核物理学から医科学まで広範な自然科学分野を対象とする総合研究所です。その中には創薬に関連した分野も沢山あります。ユニークなのは、さまざまな機器や技術基盤に横串を刺すことで創薬テーマを発展させ、臨床現場につなげようという「創薬・医療技術基盤プログラム(DMP)*」ではないかと思います。DMPでは、理研のみならず大学や研究機関で芽吹いた創薬シーズを育てるために、ケミカルバンク、化合物探索、分子設計、抗体開発、構造生物学、創薬化学、iPS細胞基盤、AI創薬基盤など、理研内のさまざまな技 術*を有するいろいろな研究センターに連携ユニットを設置し、各テーマは必要な連携ユニットを利用して研究開発を進め、さらに有望なものはプロジェクト化し、非臨床・臨床段階のトランスレーショナルリサーチを支援しています。そして最終的には、これらを適切な段階で企業や医療機関に移転することを目指しています。 昨今の最先端技術を支える機器は大型化し、さらに大変高額になっており、これらの機器をいかにうまく共用するかが研究推進の要になっています。創薬においても、構造生物学に重要なクライオ電子顕微鏡、高磁場NMR、放射光施設、分子設計に重要なスーパーコンピュータ富岳、AI計算のためのRAIDEN、分子動力学計算に特化して開発したMDGRAPE-4Aなど、理研がもつ世界の最先端を走る機器を利用しない手はありません。現在理研では、2022年4月に着任した五神真理事長の下、Transformative Research Innovation Platforms of RIKEN Platforms、略してTRIP構想を提案しており、理研の最先端研究プラットフォームをつなぎ、良質なデータを蓄積・統合することを目指しています。さらに、「量子・スパコンのハイブリッドコンピューティング(量子古典ハイブリッドコンピューティング)」の導入、数理科学の融合により、これまでの研究デジタルトランスフォーメーション(DX)の基盤を高度化することで、次世代の研究DXプラットフォームの構築を始めています。このような基盤を活かすことで、創薬分野にもこれまで以上に貢献できると思います。 近年の創薬では、生物製剤が大きく花開きましたが、今、再び低分子化合物への回帰や中分子への移行が議論になっています。また、細胞医療や遺伝子医療などの新しいモダリティにも注目が集まっています。mRNA技術ももちろんその一つです。理研においてもiPSや人工アジュバントベクター細胞などの独自の細胞医薬技術を用いた新規のがん治療にも取り組んでいます。 今後も最先端の研究基盤の開発・整備に努めるとともに、これらを多くの皆さまに利用していただき、「特定の病態を制御しうるターゲット分子」×「ターゲット分子を制御しうるモダリティ」の進化の方向性にチャレンジすることで、日本の創薬を支援していきたいと思っています。Shigeo KoyasuExecutive Director, National research and development agency, RIKENCopyright © 2023 The Pharmaceutical Society of Japan公益社団法人 日本薬学会 医薬化学部会NO.1Vol.33 FEBRUARY 2023創薬への貢献を目指して:理研の取り組み

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