MEDCHEM NEWS Vol.32 No.4
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181である。 「創薬サービス」においては、HighThroughputScreening(HTS)を通じたヒット化合物同定、ヒット化合物からのリード化合物創製・最適化、候補化合物の選定、さらにはIND申請用試験など、海外を含めてさまざまな顧客から創薬プロジェクトとして受託し、革新的医薬品の創出に貢献する。こうした創薬プロジェクトの推進においてはイノベーションとオペレーションプロセスの双方の効率化が必要不可欠であり、より迅速に、より優れた候補化合物を創出すべく、研究者の独創的なアイディア創出を支援するとともに、個々の研究プロセスを効率化・短縮化する取り組みを進めている。例えば、ヒット探索の段階では、試験のミニチュア化や自動化を進め、可能な限りの効率化を図っており、年間30本以上のHTSを実施することが可能である。また、リード創製・最適化の初期段階では、自動合成装置も活用したパラレル合成により、短時間で多数の化合物を合成して構造活性相関(SAR)を取得できる。さらには創薬経験に基づき構築した独自のドラッグデザインのアルゴリズム「A-CODE」や、高速化された物性・ADMETなどの評価機能を通じて、質の高い「デザイン-合成-評価-解析」(PDCA)サイクルをスピーディーに回し、トータルとしてのタイムラインを大幅に圧縮させることが可能である。また、磨き上げられた開発候補化合物に対しては、申請業務やPMDA・FDAなどの当局対応の経験も活用しながら、最適な申請用データパッケージをデザインし、適切な試験マネジメントを通じて迅速にデータを取得することにより、非臨床開発期間の短縮および適切な意思決定に貢献する。さらに、臨床での適切な投与量や薬物動態・薬効を予測するにあたっては、ファーマコメトリクスを得意とするLAP&P社と連携し、より迅速かつ効率的に非臨床から臨床ステージまでのシームレスなPK/PDモデリング&シミュレーションの実現も可能である。 「プラットフォームサービス」では、例えば、オートメーション化された化合物保管倉庫や高速でADMEデータの取得を可能とするHighthroughput-ADME(HT-ADME)に代表される大規模なシステムが、創薬のオペレーショナルエクセレンスを実現する。溶解度や代謝安定性などの化合物の物性プロファイルであれば、自動化システムによって毎週数百化合物を評価し、数日で評価結果を提供することが可能である。すなわち、効率性と圧倒的なスピード、さらに20年以上のスクリーニング経験により洗練された技術で得られる堅牢なデータの提供を通じて、高速PDCAを顧客に提供することができる。各企業においても同様の研究基盤が構築されているが、こうした設備を保有するためには、導入や維持に対する投資だけでなく、人件費なども含めて大きな固定費が必要となる。そこで、AxceleadDDPのプラットフォームを戦略的に活用し、必要な試験を必要なボリュームだけ、必要なタイミングで実施すれば、研究基盤への投資を固定費から変動費にシフトさせることができ、生産性向上につながるだけでなく、時間短縮による研究の効率化も期待できるだろう。例えば、HT-ADMEの機器を自社で稼働させるためには、手間や効率も考慮し、評価すべき化合物がある程度集まってから評価することになる。一方、AxceleadDDPでは多くの顧客から依頼いただくため、常に機器が稼働しており、タイムリーに評価結果が得られ、次の新しい化合物デザインに活かすことが可能となる。 このように我々が自身の強みを活かしたサービスを提供するなかでも、科学技術は日々進歩し、顧客のニーズも十人十色、多種多様である。これらに柔軟に応えるため、現在の強みである低分子・ペプチド創薬のみならず、AxceleadDDPにはない先端的技術を保有する10社以上のパートナーとの戦略的提携を活用し、核酸や再生医療といった新たなモダリティやAIやiPS細胞などの最先端の技術の顧客提供を可能にしている。例えば、AI企業のFRONTEO社との協業では、我々が保有するバイオインフォマティクス、遺伝子・タンパク質・代謝物の独自のオミックスプラットフォームに加えて、彼らの「ConceptEncoder」という自然言語解析AIを用いた認知バイアスのないアプローチを導入することにより、他に例を見ない創薬ターゲット・メカニズム探索が可能である。これ以外にも、創薬コアコンピタンスとして新たな技術開発にも注力しており、特に初期モノづくり機能や多様なモダリティの評価機能を中心に、創薬基盤の強化にも積極的に取り組んでいる。代表的なものとして、AffinitySelectionMass(AS-MS)を用いたRNA創薬(低分子でRNAを修飾する創薬)や、iPS細胞を用いたフェノティピックスクリーニングなどをあげることができる。両者とも通常の約150万の化合物ライブラリに加え、RNA創薬を指向したオリジナルの化合物ライブラリ(RNAfocusedlibrary/RNAsplicinglibrary)や化合物と薬理情報が紐づいたアノテーションライブラリをベースに、これまで難しかった創薬ターゲットにつ

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