216AUTHORチとして、現在、PROteolysisTArgetingChimeras(PROTACs)17)が注目を集めている。PROTACは、標的のリガンドとE3ligaseのリガンドをリンカーで連結したキメラ分子で、標的タンパク質の分解を誘導する中分子化合物である。Kinaseではすでに獲得性薬剤耐性が課題となっているBTKや、足場タンパク質としての機能も重要なIRAK4を標的とするPROTAC経口薬の臨床試験が進んでいる。PROTACは選択性の確保においても有効なアプローチであり、標的とE3ligase、PROTACの三者複合体形成に基づき、分解作用の選択性を発現することが報告されている18)。また、CRBNモジュレーターのlenalidomideがCK1αを分解誘導する例19)や、変異体PI3Kαの選択的な分解薬inavolisib20)のように阻害薬として探索・開発された化合物からも標的分解作用を有する低分子化合物が見つかっており、標的分解アプローチ自体も拡張されつつある状況である。 最後に、医薬品の標的として、承認薬でカバーされたkinaseはkinome全体の20%程度2)で、まだ機能が解明されていない“DarkKinome”も多く存在する。今後、TARGET203521)プロジェクトの進捗に伴い、これまで注目されてこなかったkinaseに対する基礎研究が加速し、これにさまざまな創薬モダリティが加わることで、多様な疾患の治療薬が創製されてくることを期待する。 近年、雑誌出版を取り巻く環境は大きく変貌し、誌面の電子化、オープンアクセス化、および二次利用に関して、あらゆる面からの対処が必要となって参りました。公益社団法人日本薬学会医薬化学部会といたしましては、過去に掲載された記事の電子化ならびに二次利用につきまして、著作権の適正な管理・運用をめざし、次のとおり手続きをさせていただきます。 本誌に掲載された記事につきましては、その利用にかかわる著作権(複製権、公衆送信権、翻案権、上映権、譲渡権、二次的著作物の利用に関する権利など著作物の利用上必要な著作権)の行使を日本薬学会に許諾されたものとし、今後発行する本誌に関しましても同様の扱いとさせていただきます。すべての記事について、適当なタイミングでJ-STAGEにおいてオープンアクセス化されること、およびChem-Stationに記事の一部が転載される可能性があることについて、ご了承をお願いいたします。 なお、上記の許諾は、執筆者の著作権(執筆者自身による他誌・書籍への引用や転載など)を制限するものではありません。 過去にご執筆いただきました先生方におかれましても、ご理解とご協力をいただきますようお願い申し上げます。参考文献1)P.Cohen,et al.,Nat. Rev. Drug Discov.,20,551‒569(2021)2)M.M.Attwood,et al.,Nat. Rev. Drug Discov.,20,839‒861(2021)3)C.C.Ayala-Aguilera,et al.,J. Med. Chem.,65,1047‒1131(2022)4)R.Capdeville,et al.,Nat. Rev. Drug Discov.,1,493‒502(2002)5)Y.Liu,et al.,Nat. Chem. Biol.,2,358‒364(2006)6)Y.Hantani,et al.,FEBS Open Bio,8,1412‒1423(2018)7)X.Wang,et al.,J. Med. Chem.,55,7332‒7341(2012)8)C.Zhang,et al.,Nature,526,583‒586(2015)9)T.Yoshida,et al.,Oncotarget,3,1533‒1545(2012)10)Z.M.Khan,et al.,Nature,588,509‒514(2020)11)A.G.Gilmartin,et al.,Clin. Cancer Res.,17,989‒1000(2011)12)M.Teng,et al.,J. Med. Chem.,65,7581‒7594(2022)13)A.A.Wylie,et al.,Nature,543,733‒737(2017)14)J.D.Clark,et al.,J. Med. Chem.,57,5023‒5038(2014)15)T.W.Johnson,et al.,J. Med. Chem.,57,4720‒4744(2014)16)J.Singh,J. Med. Chem.,65,5886‒5901(2022)17)M.Békés,et al.,Nat. Rev. Drug Discov.,21,181‒200(2022)18)A.Gopalsamy,J. Med. Chem.,65,8113‒8126(2022)19)J.Krönke,et al.,Nature,523,183‒188(2015)20)K.W.Song,et al.,Cancer Discov.,12,204‒219(2022)21)https://www.target2035.net/(最終閲覧日:2022年8月5日)飯尾清誠(いいお きよせい)1999年大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了同 年日本たばこ産業株式会社入社2001~2004年 米国カリフォルニア州公益社団法人日本薬学会医薬化学部会TularikPharmaceuticalCompany出向2019年より現職 新規創薬アプローチの調査、導入に従事Copyright © 2022 The Pharmaceutical Society of Japan著作物利用許諾に関するお願い
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