MEDCHEM NEWS Vol.32 No.4
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213図1  低分子Kinase阻害薬のタイプと代表化合物の構造図2  ATPポケットに作用する阻害薬のタイプ分類と代表化合物の結合様式たが、そのほとんどを占めるV600E変異体を標的とし、FBDD(フラグメント創薬)から創製されたのがvemurafenibである。野生型BRAFは二量化を経て活性化されるのに対し、BRAFV600Eは単量体で活性を有す。VemurafenibはそのATPポケットへαChelixを外側に押しだす形(αC-OUT)で結合するTypeⅠ1/2阻害薬で、特殊な不活性型構造を安定化するため、kinase選択性が高い。また、野生型BRAFへTypeⅠ阻害薬やTypeⅡ阻害薬が結合すると、RAFの二量化を誘起しシグナル経路の活性化を起こす、いわゆるparadoxicalactivationが問題になるが、vemurafenibはBRAFの二量化が不利となる構造へ誘起するため、それが起きにくい7)。 現在、paradoxicalactivationを完全に抑制する“paradoxbreaker”と呼ばれるPLX8394の臨床試験が進行中である。PLX8394は、vemurafenibのスルホンアミド部がスルファミドに変換されたTypeⅠ1/2阻害薬4-1.TypeⅢ阻害薬-Trametinib Trametinibは、前項のBRAFV600変異体発現の悪性黒色腫の治療薬として承認されたアロステリック型で、αChelix上のLeu505とより近接することにより、RAF二量化形成を強く抑制すると考えられている8)。4. アロステリック阻害薬 Kinase阻害薬の分類では、ATPポケット外のアロステリック部位に結合し、ヒンジ領域とは直接相互作用しない阻害薬をアロステリック型と呼ぶ。この内、ATPポケットに近接するactivationloopやαChelixから形成されるポケットに作用する阻害薬をTypeⅢ阻害薬、ATPポケットから離れたアロステリック部位に作用する阻害薬をTypeⅣ阻害薬と呼ぶ(図3)。一般に、両タイプとも極めて高いkinase選択性を示す。

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