MEDCHEM NEWS Vol.32 No.4
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NNNOH2NNHN●ステム -brutinib(-ブルチニブ)[抗悪性腫瘍薬]●ステム「-brutinib」をもつ医薬品OIbrutinib(イブルチニブ)BTKのキナーゼ活性を阻害しB細胞性腫瘍の増殖を抑制する。再発または難治性の中枢神経系原発リンパ腫、および、原発性マクログロブリン血症およびリンパ形質細胞リンパ腫を効能・効果として承認されている。アカラブルチニブもBTKと結合しBTKを阻害し、小リンパ球性リンパ腫を含む再発または難治性の慢性リンパ性白血病の治療に用いられている。ザヌブルチニブ(BrukinsaⓇ)は、マントル細胞リンパ腫患者の治療薬として米欧で承認されている。なお、ステム「-brutinib」には、チロシンキナーゼ阻害薬を定義するステム「-tinib」1)が含まれている。1)「医薬品の名前:ステムを知ればクスリがわかる」じほう p180(2013)211AUTHORCH2参考文献1)BuninB.A.,et al.,J. Am. Chem. Soc.,114,10997‒10998(1992)2)高橋孝志ほか,有機合成化学協会誌,60,426‒433(2002)3)YuenL.H.,et al.,ChemBioChem,16,829‒836(2017)4)GarciaJ.G.,Methods Enzymol.,369,391‒412(2003)5)田端健司ほか,Pharm stage,21,8‒12(2022)6)GorgullaC.,et al.,iScience,24,102021(2021)7)https://www.chemspeed.com/(最終閲覧日:2022年8月5日)定義:agammaglobulinaemiatyrosinekinase(Bruton’styrosinekinase)inhibitors[無ガンマグロブリン血症チロシンキナーゼ(ブルトン型チロシンキナーゼ)阻害薬]1.Ibrutinib(イブルチニブ、ヤンセンファーマ、2016年承認)2.Tirabrutinib(チラブルチニブ、小野薬品工業、2020年承認)3.Acalabrutinib(アカラブルチニブ、アストラゼネカ、2021年承認)4.Zanubrutinib(ザヌブルチニブ、BeiGene、日本未承認/2019年米国承認/2021欧州承認) 無ガンマグロブリン血症(agammaglobulinaemia)チロシンキナーゼ[ブルトン型チロシンキナーゼ(Bruton’styrosinekinase、BTK)]阻害薬を定義するステムとして「-brutinib」がある。非受容体チロシンキナーゼであるBTKは、リンパ球B細胞の細胞表面にあるB細胞抗原受容体(BCR)のシグナル伝達の下流に位置し、B細胞の活性化などに関与している。B細胞性腫瘍では、BCRシグナル伝達経路が恒常的に活性化しており、BTK阻害薬はBCRシグナル伝達経路の下流に位置するBTKを阻害しB細胞性腫瘍の増殖を抑制する。 ステム「-brutinib」をもつ医薬品として、日本ではイブルチニブ(イムブルビカⓇ)、チラブルチニブの塩酸塩(ベレキシブルⓇ)、アカラブルチニブ(カルケンスⓇ)が上市されている。日本で最初に承認されたBTK阻害薬であるイブルチニブは、BTKの活性部位に共有結合しBTKのキナーゼ活性を阻害する。小リンパ球性リンパ腫を含む慢性リンパ性白血病、および、再発または難治性のマントル細胞リンパ腫を効能・効果として承認されている。日本の製薬企業が開発したチラブルチニブの塩酸塩もBTKと結合して瀬尾竜志(せお りゅうし)2001年熊本大学大学院薬学研究科博士前期課程修了2001年山之内製薬株式会社入社2005年合併によりアステラス製薬株式会社2022年より現職入社以来、メディシナルケミストとして創薬研究に従事。2003年からハイスループット合成も担当。近年はAI創薬プラットフォームの構築に従事。渡辺順子(わたなべ じゅんこ)2003年京都大学大学院薬学研究科修士課程修了2003年藤沢薬品株式会社入社2005年合併によりアステラス製薬株式会社2022年より現職入社以来、メディシナルケミストとして創薬研究に従事。2015年からハイスループット合成も担当。Copyright © 2022 The Pharmaceutical Society of Japan宮田 直樹(名古屋市立大学)Copyright © 2022 The Pharmaceutical Society of Japanステム手帖-18

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