MEDCHEM NEWS Vol.32 No.4
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210図2  ハイスループット合成と最新技術との融合発生と独自のADMET予測モデルを統合したシステムを実装しており、ライブラリーデザイン時にADMET予測値に基づいたBB選択が可能である。特にADMETの項目に明確な課題がある場合や、多項目の同時最適化が必要なリード最適化プロセスにおいて、目的とするプロファイルを満たす化合物を早期に取得するのに有効である。 このような効果的にデザインされた化合物の迅速な合成としてだけでなく、AIの高精度化への寄与も期待できる。すなわち、ハイスループット合成は高精度なAI構築に必要な大量の学習データを迅速に取得できる手段であり、特に標的に対する薬理活性データが乏しい研究の初期段階においては、その効果が顕著である。例えば、ハイスループット合成により取得したデータでAIを再学習させ、その再学習後のAIを活用してデザインした化合物を再度ハイスループット合成するといったサイクルを繰り返すことで、より正確な予測結果に基づく化合物デザインを可能とする実用性の高いAIの早期構築が期待できる。 AIと同様に、創薬研究におけるロボットの活用も進んでいる。ロボットなどを用いた化合物の自動合成は欧米大手製薬企業を中心に盛んに取り組まれており、弊社もChemspeed社の自動合成ロボットを導入し7)、他の周辺機器とも組み合わせてロボット合成プラットフォームを構築中である。このプラットフォームには、弊社が長年培ってきたハイスループット合成技術や機器・システムなどの多くのスキルや知識(ノウハウ)を応用している。特に前述の化合物精製システムなどは共通部分が多く、小スケールを想定したハイスループット合成用の装置を、100mg程度のサンプル精製用にスケールアップして利用している。多数の化合物を溶液サンプルとして調製し迅速に取得するハイスループット合成と、粉体サンプルとして化合物を取得するロボット合成、従来型のマニュアル合成および外部委託合成を用途によって使い分けて活用することで、創薬合成研究の加速化を実現している。4. おわりに 本稿では創薬研究におけるハイスループット合成技術の概要と最新技術との融合による弊社の取り組みについて述べた。本技術自体は約20年以上も前から創薬研究の現場で活用されており決して新しい技術ではないが、機器の発展や周辺技術の進歩に合わせて進化し続けており、ハイスループット合成技術自体の効率が向上し、その活用法も幅を広げている。今後、さらなるオートメーションの追求や、新規モダリティへの応用などが期待される。

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