208図1 アステラス製薬におけるハイスループット合成の流れ2-1.ライブラリーデザイン 図1は弊社におけるハイスループット合成の典型的な手順を示したものである。まずはじめに合成すべきライブラリーをデザインする。ヒットまたはリード化合物などの合成展開したい部分構造を、カルボン酸やボロン酸などの反応に用いることのできる官能基を有するビルディングブロック(buildingblock:BB)から効率よく合成できる合成経路を立案するところよりデザインは始まる。ライブラリーデザインはBBを選ぶこととほぼ同義であるため、デザインの幅が広がるように、種類が豊富なBBを基にした合成経路の立案が重要である。さらに、多種多様なBBをすぐに利用可能な状態で保有しておくことも研究を加速するうえで重要になる。弊社では、ハイスループット合成用として約25,000種類のBBが利用可能である。このBBライブラリーの管理は外部委託しており、研究者がBBのIDと必要量をリストで依頼すれば、翌日には反応容器(試験管)に必要量が秤量された状態でデリバリーされる。 多種多様なBBライブラリーから効率よくBBを選択するには工夫が必要である。あらかじめ多様性を有する初期展開用BBセットを用意しておくことも有効な手段2-2.合成 ハイスループット合成では、通常、多数の反応をそれぞれ同じ操作で並列に処理する。弊社では、一般的な96ウェルプレートや各種装置の試験管ラックなどの数に合わせて、1度に96反応を並列で実施する場合が多い。反応スケールは、1ステップの反応であれば基本的に25~30μmol程度の小スケールで実施しているが、マルチステップ合成や期待収率が低い反応の場合には、スケールアップして実施する。反応を仕込む操作は研究者の手を介して実施しており、BBが入ったそれぞれの反応容器に溶液化した試薬や基質を電動ピペッターなどで分注している。基本的に液相合成であり、後処理を簡略化するために固相担持試薬を使用する場合もある。通常の加熱または冷却反応に加え、マイクロウェーブ反応も実施可能である。の1つではあるが、1回の合成でより効果的にSARを取得するためには最適なBBの選択が必要とされる場合が多い。弊社では、所有するBBに対して、反応に利用できる官能基の種類別のタグ付けと構造のクラスタリング情報を事前に付与し、さらに25万件を超える過去の利用情報も参考に、BBを効率よく選択できるツールを用意している。2. ハイスループット合成の流れ
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