MEDCHEM NEWS Vol.32 No.4
33/56

(A)ハンチントン病の原因となる変異型HTT(mHTT)を標的とする分子のりタイプのATTEC。(B-D) ATTECのLC3結合能を利用したキメラ分子タイプのデグレーダー。標的として、脂肪滴(LD)、BRD4、NAMPTの分解に(C) p62リガンドを利用したAUTOTAC技術。AUTOTAC分子はp62のZZドメインに結合し、p62の凝集化を介して分解を誘起する。205図4  AUTAC以外のオートファジー基盤デグレーダー成功している。がん関連因子やタンパク質凝集体の分解に成功している。5-1.ATTEC 中国復旦大学のLuは、ハンチントン病の原因となる変異型ハンチンチン(mHTT)と隔離膜上のLC3との間を仲介するデグレーダー(ATTEC)を発表した(図4A)11)。ATTECは、mHTTを特異的に分解し、ハンチントン病モデルマウスにおいて病態の改善を示した。 ATTECは、タンパク質であるオートファジー受容体の役割を低分子で置き換える技術である。分子のりタイプであるため、薬剤の分子量を低く抑えられる点が長所となる。一般に、合理的な分子のりの設計は難しいが、このケースでは、2つの標的タンパク質、すなわちプトが提唱されている。ただし、いずれの手法も最初に発表されたproof-of-conceptに続くフォローアップの論文が乏しく、現段階では黎明期の域を脱していない。ここではそれぞれの手法に関する現状を探る。5-2.AUTOTAC AUTOTACBio社、ソウル国立大学のKwonグループが発表したAUTOTAC11)は、p62のN-レコグニンmHTTとLC3に対して、個別に順次スクリーニングするという直裁的な方法で成功している。他方、分子のりによる三元複合体形成では、関与するタンパク質同士の相互作用が無視できないことが一般的である。分解を狙う個々の基質に対するスクリーニングがいつも成功するとは考えにくい。 この欠点を補うため、LuやOuyangのグループは、ATTECのLC3結合能を生かしたキメラ分子の作成を独立して行った。脂肪滴やBETファミリータンパク質などの分解が報告されている(図4B-4D)13~15)。現状でのATTECは、AUTACと同様のキメラ分子技術と形容できるだろう。

元のページ  ../index.html#33

このブックを見る