MEDCHEM NEWS Vol.32 No.4
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3(S-217622)198図5  ヒット化合物1からのSAR展開と3(S-217622)の発見2)図6  S-217622のプロファイルS1’3CLpro IC50: 8.6 µMS1S2123CLpro IC50: 0.096 µM3CLpro IC50: 0.013 µMていたこと、そして初期SAR情報を迅速に得ることができたことも、高速創薬の実現に寄与した。 得られた複合体構造情報を元に、確認された水素結合を維持、改善しつつ、化合物の最適化を行った。この際、最短で候補化合物が得られるよう、活性とPKにおいてカギとなると考えられる構造は残した形でのSAR展開にフォーカスすることとした。すなわち、S1ポケットとS1ʼポケットの変換である。S1ʼポケットとの適合性を高めるために、Thr26との水素結合を維持しながらP1ʼリガンドを最適化した。その結果、P1ʼリガンドとして6-クロロ-2-メチル-2H-インダゾールを有する化合物2において、ヒット化合物1の良好なPKプロファイルを維持しながら、90倍の酵素阻害活性向上に成功した。次に、P1メチルアミド部分をヘテロ環化合物に変換し、SAR展開開始から4ヵ月で活性を600倍以上向上させ、2-3.S-217622(Ensitrelvir)のプロファイル S-217622は、IC50=0.013μMの酵素阻害活性とEC50=0.37μMの抗ウイルス活性、および高い代謝安定性(ヒトおよびラット肝臓ミクロソームでそれぞれ96%および88%)を示した。また、ラットPK試験により、高い経口吸収性(97%)と低い全身クリアランス(1.70mL/min/kg)が確認でき、さらにサルやイヌにおいて、より低い全身クリアランスと、長い血中消失半減期を示すなど、リトナビルなどのPKブースターを必要とせずに、1日1回経口投与による治療が実現できる可能性を確認できた(図6)。S-217622は、オミクロン株をはじめとしたSARS-CoV-2変異体に対して、すべて同等の抗ウイルス活性を示した。また、SARS-CoV、MERS-CoVとのちのS-217622となる化合物3を見出した(図5)。

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