MEDCHEM NEWS Vol.32 No.4
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196図1  SARS-CoV-2のライフサイクル図2  代表的な3CLpro阻害剤 a.Vero76 細胞を用いて評価。b.2μMのP-gp阻害剤(CP-100356)存在下、VeroE6細胞を用いて評価。験もあったことから、この情報を見て即座に、「これまでの経験を活かした高速創薬が可能ではないか」と直感し、準備を開始した。当時社内では、北海道大学との共同研究による、抗ウイルス活性を指標としたフェノタイプスクリーニングにより見出された化合物を起点とした低分子創薬も展開されており、SARS-CoV-2というウイルスに関する最新の知見が得られる環境であったことも幸いした5)。当時は自分自身の中にも、「薬までは10年、開発候補品創製まででも5年」という頭があったが、「数年たっても流行を繰り返す、インフルエンザのような存在になっている可能性もある」と考え、何とか通常の半分以下の期間で開発候補品を得ることを目指し、創薬を開始することとした。 緊急事態宣言期間を経て本研究を本格的に開始した2020年6月当時、3CLpro阻害剤としてはファイザー社がSARS流行時に創製していたPF-00835231を含め、システインと可逆的な共有結合を形成する、基質ペプチド類縁の共有結合性阻害剤がいくつか知られていたが(図2)6~8)、筆者らは当時、その化学的特徴に由来する経口吸収性など薬物動態の悪さ、および共有結合性であ

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