MEDCHEM NEWS Vol.32 No.4
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3.課題と今後の展望194AUTHOR 冒頭にも述べたが、RXR作動薬の医薬開発において、催奇形性は無視できない。All-transレチノイン酸(ATRA)と9cisRAでは、後者がより強力なRXR作動性を示すが、その催奇形性はATRAに比べ弱く、その理由として9cisRAの低胎児移行性によって説明されている18)。Bexarotene(2)については、筆者らによってその11C標識体により胎児移行性が確認されている19)。催奇形性評価としてゼブラフィッシュ胚モデルを用いた方法が知られることから、2ならびにCBt-PMN(3)について調べたところ、2に比べ高濃度を必要とするがCBt-PMNでの催奇形性が認められた20)。3に比べより低濃度でRXRを活性化しうるRXR部分作動薬であるCBTF-PMN(4)(図1A)は、催奇形性が軽減している。このことから、筆者らはRXRの活性化よりも、その構造や脂溶性に基づくものと考え、4のピリジン誘導体としてCATF-PMN(5)(図1A)を創出した。本化合物のRXRα活性はEC50=27nM、Emax=86%でありながら、ゼブラフィッシュ胚における催奇形性が軽減した20)。今後、5のIBDモデルにおける治療効果に興味がもたれる。謝辞 本研究は、慶應義塾大学の大貫公義博士、長谷耕二教授、高橋大輔講師等、富山県立大学の古澤之裕准教授、日本大学の槇島誠教授、岡山大学の渡邉将貴博士、高村祐太修士等、多くの共同研究者によって行われました。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。参考文献1)潰瘍性大腸炎の皆さんへ知っておきたい治療に必要な基礎知識,難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(鈴木班),http://www.ibdjapan.org/patient/pdf/01.pdf(最終閲覧日2022年8月19日)2)加藤順(編),jmedmook77現場で知りたいIBD診療のすべて比べてわかる!潰瘍性大腸炎とクローン病,日本医事新報社(2021)3)AnanthakrishnanA.N.,et al.,Gut,63,776‒784(2014)4)CheH.,et al.,Mol. Nutr. Food Res.,65,e2000986(2021)5)OhD.Y.,et al.,Cell,142,687‒698(2010)6)deUrquizaA.M.,et al.,Science,290,2140‒2144(2000)7)ZhaoJ.,et al.,Oncotarget.,8,8397‒8405(2017)8)DesreumauxP.,et al.,J. Exp. Med.,193,827‒838(2001)9)DawsonM.I.andXiaZ.,Biochim. Biophys. Acta,1821,21‒56(2012)10)ShulmanA.I.,et al.,Cell,116,417‒429(2004)11)PileriA.,et al.,Immunotherapy,5,427‒433(2013)12)LalloyerF.,et al.,Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol.,26,2731‒2737(2006)13)McFarlandK.,et al.,ACS Chem. Neurosci.,4,1430‒1438(2013)14)KakutaH.,et al.,ACS Med. Chem. Lett.,3,427‒432(2012)15)ChoJ.Y.,et al.,Mol. Nutr. Food Res.,55,239‒246(2011)16)OnukiM,et al.,Int. Immunol.,31,251‒262(2019)17)ZigmondE.,et al.,Immunity,37,1076‒1090(2012)18)KochharD.M.,et al.,Teratology,51,257‒265(1995)19)TakamuraY.,et al.,ACS Pharmacol. Transl. Sci.,inpress(2022)20)TakamuraY.,et al.,Bioorg. Med. Chem. Lett.,29,1891‒1894(2019)加来田博貴(かくた ひろき)2003年東京大学大学院薬学系研究科博士後期課程修了同 年岡山大学薬学部助手2006年スクリプス研究所客員研究員2008年岡山大学大学院医歯薬学総合研究科准教授2021年~現職RNA標的低分子創薬 アンチセンスオリゴヌクレオチドを含むRNA結合性分子の中で、特に低分子をモダリティとしたドラッグディスカバリー研究を指す。アンチセンスオリゴヌクレオチドはRNA中の塩基配列を一次元的に認識して結合するのに対し、低分子はRNAの構成する三次元(以上の)構造を認識して結合することで標的RNA特異的に結合できる可能性が明らかになってきた。標的へのデリバリーや副作用の点で制約があるアンチセンスオリゴヌクレオチドに対し、低分子は経口吸収性や脳内移行性を獲得できることをはじめ、従来のメディシナルケミストリーによる化合物最適化が実施できる可能性があることがメリットと考えられる。2021年に米国FDAによって承認された、脊髄性筋萎縮症治療薬であるリスジプラムが好例である。阿部正人(WarrenCenterforNeuroscienceDrugDiscoveryatVanderbiltUniversity)Copyright © 2022 The Pharmaceutical Society of JapanCopyright © 2022 The Pharmaceutical Society of Japan用語解説

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