MEDCHEM NEWS Vol.32 No.4
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5. おわりに189写真1  筆者とMatthew Disney labのラボメート その右下にいるのが筆者)( Scrippsのラボ内にて、後段右から3番目が先生、 AUTHORRNA前駆体に結合することを確認するべく、Chem-Clip法(共有結合でRNAターゲットに付加させ、親和性beadsで単離(pull-down)し分析する手法)に用いる化合物をデザイン・合成した。2次元waterlogsyNMRより得られた結合様式を基に、bindingに関与しない部分に光反応性モジュールを導入した(図2b)。この化合物を用いたChem-clip法によって、標的としたMAPTメッセンジャーRNA前駆体の有意な濃度上昇が確認され、確かなターゲットの関与が示唆された。 国内の製薬会社でコツコツとメドケムに精を出す研究生活をしていた筆者が、アメリカのアカデミアに籍を移すことになり、新しい創薬ターゲットの世界に足を踏み入れ、新しい分野にチャレンジしたのは、大変な部分がある一方で、刺激に満ちたものだった(写真1)。製薬会社を辞めてアメリカに来たというのに、即クビ(→即強制帰国)になったらどうしようとアメリカに来た当初は参考文献1)Colak,D.,et al.,Science,343,1002‒1005(2014)2)Kumar,A.,et al.,ACS Chem. Biol.,7,496‒505(2012)3)BushJ.A.,et al.,Sci. Transl. Med.,13,eabd5991(2021)4)BenhamouR.I.,et al.,J. Med. Chem.,63,7827‒7839(2020)5)Wagner-GriffinS,et al.,J. Med. Chem.,64,8474‒8435(2021)6)ChenJ.L.,et al.,J. Am. Chem. Soc.,142,8708‒8727(2020)7)Velagapudi,S.P.,et al.,Nat. Chem. Biol.,10,291‒297(2014)気にしていたが、真剣に日夜研究に励んでいるうちにそんなことは忘れていた。真剣さは研究を通じて伝わるものだと思う。MatthewDisneylabにはさまざまな経緯で、同様に日本からメドケミストやケミカルバイオロジストが研究に来ていて、切磋琢磨するとともに助け合いがあったので感謝している。時期を同じくして共に日夜研究に明けくれた相川春夫博士(東京大学理学部菅研究室)、田中徹博士(日本新薬株式会社)、赤堀禎紘博士(第一三共株式会社)、松本安正博士(田辺三菱製薬株式会社)にこの場を借りて感謝したい。現在、筆者はアメリカのアカデミアドラッグディスカバリー研究機関(WarrenCenterNeuroscienceDrugDiscoveryCenter(WCNDD),Tennessee)に所属し、メドケミストとして新しい創薬ターゲットに挑戦を続けている(現在は、主にWCNDD/製薬会社共同DrugDiscoveryプロジェクト、Methodologydevelopmentプロジェクトに参画)。本コラムの私見が似た考えに至った方や似たコンセプトをもつ研究自体の後押しになれば幸いである。阿部正人(あべ まさひと)2001年~2005年早稲田大学理工学部化学科2005年~2010年早稲田大学大学院先進理工学研究科化学生命化学専攻2008年~2010年学術振興会特別研究員(DC2)2010年~2018年大正製薬株式会社2015年~2016年VanderbiltCenterforNeuroscienceDrugDiscovery(VisitingScientist,Tennessee)2018年~2020年TheScrippsResearchInstitute(Florida)2020年~現職WarrenCenterforNeuroscienceDrugDiscovery(Tennessee)現職にて主にWCNDD/製薬会社共同DrugDiscoveryプロジェクト、Methodologydevelopmentプロジェクトに参画Copyright © 2022 The Pharmaceutical Society of Japan

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