4-3. タウ-メッセンジャーRNA前駆体に対して結合し、188図2 a)4Rタウタンパク質と3Rタウタンパク質を調節するタウメッセンジャーRNA前駆体、b)Chem-clip化合物のデザインTT-TT interactinVan der Waals interaction得られたヒット化合物は、キナゾリン母核修飾および置換、カテコールアニリン部位のfusedringへの置換を経て、invitro活性が>20倍向上した化合物を得ることができた(図1b)。ここはメドケミストとして得意な部分で、これまでのSARを展開する力をフルに動員できたように感じる。活性向上したリードに関して、分子末端にアミンを付加した化合物は、invitro活性がさらに向上したものの、細胞試験において細胞毒性との乖離が困難でありこの展開は断念した。化合物のカチオン性は、RNAの有する負に帯電した糖部位と高い親和性を示す傾向があるが、細胞試験で問題になることが往々にして起こる。得られたリード化合物は、C-C-U-GリピートRNAに対して特異的な結合(MST試験Kd:192nM)を示し、またDM2細胞において1uMで約30%のスプライシング異常を改善することが示された。druglikeな低分子がC-C-U-Gリピート配列に選択的に結合し、DM2細胞中のスプライシング異常を改善した最初の例で、HTShittoleadストラテジーの有用性が示唆された。スプライシングを調節する低分子の合成と評価6) タウタンパク質をコードするMAPT遺伝子におけるメッセンジャーRNA遺伝子前駆体の機能不全が起こると、タウ重合体であるオリゴマーの生成が進行し、前頭型側頭認知症パーキンソニズム(FTDP-17)の病因となる。また、アルツハイマー病の病因となっている可能性も示唆されている。タウメッセンジャーRNA遺伝子前駆体は、exon10と11の間に存在するintron10部位に転写因子が作用することでスプライシングが進行し、exon10が欠損したものは3R-tauタンパク質、維持したものはその後凝集する4R-tauタンパク質となる。FTDP-17病態では4R>3Rという不均衡が起きているが、intron10部位の変異体がこれを改善することが報告されているため、この部位へ結合する低分子を見出すべく研究が開始された(図2a)。当研究室で得られたヒット化合物をもとにPfizer社のlibraryがバーチャルスクリーニングされ、CNSMPOスコアが改善したリード化合物が得られた。当研究はPfizer社との協業によって進められた。論文作成ももちろん協業で行い、Pfizer社のメドケミスト達と意見交換できたのは興味深かった。 筆者はこのリード化合物がMAPTメッセンジャー
元のページ ../index.html#16