MEDCHEM NEWS Vol.32 No.3
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7. おわりに技術情報協会編166AUTHORアプリなどを展開して急成長しました。モジュール創薬を手掛けるDelta-Fly Pharma株式会社や、ステント型血栓除去デバイスを開発した株式会社Biomedical Solutions、治療用アプリを開発する株式会社CureAppやサスメド株式会社、遺伝子治療やゲノム編集技術を用いた治療薬開発に挑戦する株式会社モダリスなど、数多くのスタートアップ企業が東京日本橋に集まり、注目を集めています。 LINK-Jは歩みを止めることなく試行錯誤と軌道修正を続けます。例えば、これまでに蓄積したネットワーク力と発信力を駆使し、距離や言語の壁に挑みます。ス 「これだけは」とのタイトルに反して物凄い分量に圧倒されるものの、このご時世、世界のウイルス性疾患の現状を学ぶにはもってこいの1冊である。もちろんSARS-CoV-2に関してもしっかりと言及されているが、C型・B型肝炎ウイルスやHIV、また「顧みられない熱帯病」に該当するデングウイルスなど、幅広いウイルス種についてカバーされている。ウイルスに関する創薬技術についても豊富に記載されており、タンパク質の構造解析やウイルスの培養法、ベクターの活用に関してなど、読み応えがある。しかし、やはりメディシナルケミストが注目したいのは「ウイルス疾患に対するワクチン・抗体・阻害剤開発」の章であろう。 私が特に興味を抱いたのは「免疫老化に対する創薬研究」の項だ。老化に際して起こる免疫機能の低下はウイルス性疾患発症の大きな原因である。獲得免疫・自然免疫のいずれも技術情報協会/A4判/601ページ・定価88,000円(税込)(2021年8月)加齢とともに衰え、炎症が惹起されやすい環境となる。高齢者においてSARS-CoV-2感染が重症化しやすいのも免疫老化と関連する。老化細胞における慢性炎症などの「負の表現型」を抑制するいわゆる“senomorphic”薬は、SARS-CoV-2感染高齢者の回復を促進したとされる。直接的な抗ウイルス薬以外にも、さまざまな作用機序で感染症を治療可能であることを心に留めておきたい。 その他にも、メディシナルケミストが大好きであろう各種抗ウイルス薬についての各論も載っており、たとえ感染症が専門でなくとも読み物として非常に歯応えがある。1ラボに1冊欲しい良書である。タートアップ企業の国内外向け情報発信に協力し、認知度向上、パートナー探索、資金調達、事業展開等への貢献を目指します。LINK-Jは「つなぐ」(=LINK)を通じて、みなさまのオープンイノベーション実現のお役に立つことを目指しています。いつでもお気軽にお声がけいただければ幸いです。曽山明彦(そやま あきひこ)東京大学理学部物理学科卒業。米国コロンビア大学MBA。大学卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。複数の欧米系医療機器企業の日本法人社長を歴任。2016年3月、LINK-J理事兼事務局長に就任。現在LINK-J常務理事。東北大学特任教授、厚生労働省や経済産業省の委員会委員、神戸市や札幌市のアドバイザー他を務める。Copyright © 2022 The Pharmaceutical Society of Japan安田 大輔(大阪医科薬科大学薬学部)Copyright © 2022 The Pharmaceutical Society of Japan紹介創薬研究者がこれだけは知っておきたい最新のウイルス学

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