MEDCHEM NEWS Vol.32 No.3
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4. 標的タンパク質の光可逆的な隔離・放出が細胞細胞143図3  SPREC-Outシステム図4  optoSPRECシステムSPREC-OutoptoSPREC経路はわずかなシグナルタンパク質の活性変化で十分活性化する。実際に本システムを用いることで、細胞運動やRas/ERKシグナルを人為的に活性化することが可能であった。 上述のSPRECシステムでは、小分子ラパマイシンの添加による標的タンパク質の隔離もしくは放出を1度 しか誘導できない。そこで筆者らは、光遺伝学の分野 で開発された光解離性タンパク質モジュールであるLOVTRAP6)とSPRECを融合することで、光照射のオンオフの切り替えによって標的タンパク質の放出・隔離を繰り返しコントロールすることのできる「optoSPREC」システムを開発した(図4)4)。LOVTRAPのコンポーネントである光受容タンパク質LOV2とZdk1のペアは暗所でヘテロ二量体を形成し、青色光依存的に解離する6)。そこで、PB1と赤色蛍光タンパク質Monti-Red(MR) (四量体)からなる人工相分離タンパク質にLOV2を連結した融合タンパク質(PB1-MR-LOV2)を設計した。一方、標的タンパク質にはZdk1をタグとして融合し、これをPB1-MR-LOV2と共に細胞に発現させる。こうすることで、LOV2-Zdk1相互作用を介して標的タンパク質を内包した人工相分離ドロップレットを構築できる。本optoSPRECシステムの最大の特徴は、青色光の照射時にのみ標的タンパク質が細胞質へ放出され、光照射を止めると標的タンパク質は再度、人工相分離ドロップレット内に回収される。また、この青色光に依存した可逆的プロセスは秒単位で進行するため、細胞内情報 伝達を素早くオンオフ制御することができる。実際にoptoSPRECシステムをVav2に適用することで、細胞のラッフリングを青色光のスイッチングによって可逆 的かつダイナミックに繰り返し誘導することが可能で可能な人工相分離ドロップレット

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