MEDCHEM NEWS Vol.32 No.2
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106 第13回AFMCInternationalMedicinalChemistrySymposium(AIMECS2021)が、アジア医薬化学連合(AsianFederationforMedicinalChemistry:AFMC)の主催で、2021年11月29日から12月2日までオンラインで開催されました。本学会のオンラインでの開催ははじめての試みでしたが、日本を含む21カ国からの参加者があり、非常に実り多い学会となりました。小林利彦先生(東大薬友会会長、AFMC創始者)、松木則夫先生(東京大学名誉教授、前AFMCpresident)、国嶋崇隆先生(金沢大学)、そして青木一真先生(第一三共)とともに本学会の組織と運営に携わった者として、ここに開催報告をさせていただきます。AFMCやAIMECSの歴史と意義については、ファルマシア2021年4月号の「ベランダ」で取り上げていただいたので、そちらもご参照ください。 本国際会議は、医薬化学分野における基礎研究の最先端情報を共有し、新たな国際共同研究の始動や次世代の分子創薬新潮流の創始を目標としました。関連する国内学会としてメディシナルケミストリーシンポジウム(MCS)と創薬セミナーがありますが、2020年に開催予定であったMCSと創薬セミナーはコロナ禍で延期になっていたため、本領域では2年ぶりの学会開催となりました(創薬セミナーは2021年7月に開催済)。医薬化学・分子創薬の多様化するモダリティ分野それぞれを牽引する第一線の基礎研究者を一堂に会し、最先端の研究成果を発表・討議する、時宜を得た意義深いものであったと考えています。医薬・製薬産業界の研究者や学生も多数参加したため、産学連携の醸成や次世代の創薬分野を担う若い研究者の育成の一助になったと確信しています。 本学会の特徴は、広い意味で医薬化学に関連するさまざまな分野を代表する優れた基調講演/招待講演者でした。本会の成否は、この人選によって大きく左右されると言っても過言ではありません。このプログラム編成においては、国嶋先生に中心的な役割を果たしていただきました。医薬化学部会の幹事でいらっしゃる製薬企業の先生方や大学創薬・有機化学研究の最前線で活躍する先生方からご意見をいただきながら、「今まさに新薬を開発している研究者が話を聞いてみたい研究」を集めることができました。その結果、不斉触媒化学分野から柴﨑正勝所長(微化研)、細胞内液液相分離の分野からYoung教授(MIT)、ケミカルバイオロジー分野からSchreiber教授(Harvard大)を基調講演者、遺伝子編集治療の分野からLiu教授(Harvard大)、プロテオミクス分野からTing教授(Stanford大)、PROTACの創始者であるCrews教授(Yale大)、核酸医薬の分野からManoharan博士(AlnylamPharmaceuticals)、有機合成化学分野からBaran教授(Scripps)、中枢性疾患治療の分野からLashuel教授(EPFL)とGijsen博士(Janssen)、ケミカルバイオロジー分野からWoo教授(Harvard大)、共有結合薬物のCravatt教授(Scripps)を招待講演者としてお招きし、分子を基盤とする医薬・生命科学の最先端で至玉の講演を聴くことができました。講演内容の多くが複数分野の共同研究に基づく成果であり、それぞれの専門家が異分野からの要望に応えられるオリジナルで力量のある方法論や概念を持ち寄ってひとつの大きな成果をあげる、医薬化学の真髄を感じることができました。 学会では、講演と同じくらい質疑応答も重要です。本学会では、近い将来、さまざまな分野から薬学をリードしていくことが期待される優秀な若手を、産学からバランスよく座長に起用しました。特に、聴衆の顔が見えず、予期せぬ事態が発生するやもしれぬオンライン国際会議では、パソコンモニターの情報だけで状況を判断し、議論をリードすることは簡単ではありません。この方針は大成功であり、基調講演、招待講演、一般口演、ポスター発表のすべてで有意義な議論が行われました。快く座長の依頼をお受けくださいました先生方に感謝いたします。 基調講演、招待講演だけでなく、一般口演、ポスター発表も質・量ともに優れた素晴らしいものでした。当初は一般口演を15件に絞り込む予定でしたが、アップロードされたアブストラクトを実行委員会で精査したところ、どれも素晴らしい内容ばかりで、15件に絞り込むことは勿体無いと感じました。そのため、申し込みのあった45件の演題はすべて採択し、現地開催時のレジストレーション用に確保してあった11月29日の午後を活用するなどして口演時間を確保しました。いずれの発表も十分なデータを元にした厚みのあるもので、活発な議論が行われたと感じています。ポスター発表では、オンライン開催の特徴を活かし、音声付きのスライドをポスターとすることを可能としました。また学会期間中だけでなく、会期終了後1ヵ月間まで閲覧できるようにしました。その結果、従来よりも視覚的にわかりやすいポスタープレゼンテーションになったことに加え、活発な議論がより促進されたと感じています。 スペースに限りがあるため、詳しく紹介することはできませんが、本会の開催にあたっては多くの方々から多大なご支援をいただきました。心より感謝申し上げます。次回の第14回AIMECSは、2023年に韓国で開催される予定です。金井 求(東京大学大学院薬学系研究科)Copyright © 2022 The Pharmaceutical Society of Japan記事「AIMECS 2021」開催報告

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