MEDCHEM NEWS Vol.32 No.2
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赤間 勉 著99 ノーベル賞を受賞された研究者の自伝やベンチャーの起業や経営に関する書籍は今や書店でも容易に手にできるが、日本人が自身の米国バイオベンチャーにおける研究者生活について綴ったものは非常に珍しいだろう。本書にはシリコンバレーのバイオベンチャーで2つの含ホウ素医薬品の開発に携わった赤間勉先生によって、ベンチャーのスタートアップから新薬開発、大手企業による買収を経て、現在、都内の飲食店オーナーシェフとなるまでの経験と経緯が惜しみなく綴られている。 新薬開発の成功につながった「仕事の流儀」や「マインドセット」は、一部2018年にMEDCHEM NEWSでも紹介されているが、本書はより一般向けに書かれ、直接著者の口から聞いているような気分で読み進められる。創薬分野だけでなソリック/四六判/204ページ・定価1,320円(税込)(2020年7月刊)くあらゆる仕事を進めるうえでいかに「正しく仕事をする」か、そのエッセンスが「3つのキークエスチョン」に集約され説明されている。シリコンバレーのカルチャーや就職事情についても多くのエピソードとともに紹介され、著者が現地で就職斡旋コンサルタントから受けた具体的な履歴書の書き方アドバイスや、面接の実体験も赤裸々に描かれている。 海外での研究を考えている若い研究者にはぜひとも読んでほしい一冊である。コロナ禍の雲が分厚く残る今、本書を手にシリコンバレーの大きな青空に思いを馳せてみてはいかがだろうか。きっと歩幅が幾分大きく広がるはずだ。α線核医学治療(Targeted alpha therapy:TAT) α線は、物質中での飛程が短く(細胞数個程度)、線エネルギー付与が大きい(通過した細胞に与えるエネルギーが大きい)という特徴があり、生体内ではα線放出核種に近接する細胞だけに大きなダメージを与える。すなわち、α線核医学治療(Targeted alpha therapy:TAT)により、標識薬剤を腫瘍に集積させることができれば、腫瘍周辺の正常細胞に悪影響をほとんど与えない非侵襲性のがん治療が可能になると期待される。現在、TATに適するとされる核種はアスタチン-211(211At)を含め10種類あり、そのうちラジウム-223(223Ra)は、2016年に日本でも治療薬(製品名:ゾーフィゴ)として認可され、病院での使用が始まっている。また、世界的に注目されている治療用核種アクチニウム-225(225Ac)は、いくつかのターゲット分子に標識され臨床研究が実施されている。ただし225Acは規制の面から国内製造が樺山 一哉(大阪大学大学院理学研究科)難しいため、輸入経路の安定確保が課題である。 Copyright © 2022 The Pharmaceutical Society of Japan皆瀨 麻子(東北医科薬科大学薬学部)Copyright © 2022 The Pharmaceutical Society of Japan用語解説紹介15年で2つの新薬を世に出し、5700億円で買収されたバイオベンチャー研究員の話

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