〔SUMMARY〕1．はじめに2． リード化合物探索MEDCHEM NEWS 32（2）81-86（2022）81Keyword Enarodustat （Enaroy®）, HIF-prolyl hydroxylase, Erythropoietin （EPO）, Renal anemia＊1 日本たばこ産業株式会社 医薬総合研究所 化学研究所 主任研究員 ＊2 日本たばこ産業株式会社 医薬総合研究所 安全性研究所 グループリーダー Director, Toxicology Research Laboratories, Central Pharmaceutical Research Institute, ＊3 日本たばこ産業株式会社 医薬総合研究所 化学研究所 グループリーダー Director, Chemical Research Laboratories, Central Pharmaceutical Research Institute, ＊4 日本たばこ産業株式会社 医薬総合研究所 化学研究所 主任研究員 ＊5 日本たばこ産業株式会社 医薬総合研究所 化学研究所 主席研究員 生越洋介Yosuke Ogoshi＊1・松井拓也Takuya Matsui＊2・三谷育生Ikuo Mitani＊3・横田正宏Masahiro Yokota＊4・阿部博行Hiroyuki Abe＊5 腎性貧血（renal anemia）は、慢性腎臓病（CKD）患者にとって深刻な合併症であり、内因性エリスロポエチン（EPO）の欠乏が主な原因である1）。腎性貧血の治療には、エポエチンアルファやダルベポエチンアルファなどの赤血球造血刺激因子（ESA）が使用されてきたが、ESAはすべて注射剤であり、経口投与可能な治療薬が望まれていた2，3）。 低酸素誘導因子（Hypoxia Inducible Factor：HIF） は、低酸素状態での適応反応や細胞生存に重要な役割を果たす転写因子であり、生体組織が低酸素状態に偏るとHIFの働きにより、EPO産生が促進される4）。一方、正 先駆的HIF-prolyl hydroxylase（PH）阻害薬であるFG-2216が臨床試験において造血作用を示したことを機に、経口投与可能なHIF-PH阻害薬が腎性貧血の新たな治療オプションとして期待されてきた。筆者らは、HIF-PH阻害薬のファーマコフォアを基に最適なリード化合物を追求し、強力な阻害活性を示す縮合複素環化合物を見出した。脂溶性と膜透過性を指標に細胞での活性向上を目指してリード最適化を実施し、マウスin vivoスクリーニングを軸に化合物を選抜した結果、1日1回の経口投与で造血作用を示すenarodustatを見出した。Since FG-2216, a pioneer HIF-prolyl hydroxylase （PH） inhibitor, was reported to show hematopoiesis in patients on hemodialysis, orally active HIF-PH inhibitors have been expected as a new therapeutic option. On the basis of the pharmacophore for HIF-PH inhibitors, we synthesized various scaffolds and identified several fused heterocyclic compounds as promising lead compounds. Our lead optimization to improve cell permeability and selection by in vivo screening led to the discovery of enarodustat, which showed hematopoiesis with daily oral dosing.常酸素濃度下では、HIF-prolyl hydroxylase（PH）の働きによりHIFは水酸化を経由し、分解へと導かれる5）。このことから、正常酸素濃度下でも、HIF-PHを阻害することにより、低酸素状態と同様にEPO産生を促進することが可能であると考えられた。なお、低酸素応答の仕組みを解明したGregg Semenza、Peter Ratcliffe、William Kaelin Jr.の3氏が2019年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。 以上の状況から、HIF-PH阻害剤の創薬・開発競争が世界中で繰り広げられ、近年、国内で5つの経口投与可能な低分子HIF-PH阻害剤が製造販売承認を取得した。本稿では、筆者らが創製した唯一国産のHIF-PH阻害薬であるenarodustat（エナロイ®）の創薬研究について紹介する6）。 FibroGen社によって見出された先駆的HIF-PH阻害薬であるFG-2216が臨床試験において造血作用を示したことを機に7）、多くの製薬会社が開発に乗り出したなか、筆者らも本プロジェクトを開始した。開発競争が激しく、次々と特許が公開される状況であったため、活性Senior Research Scientist, Chemical Research Laboratories, Central Pharmaceutical Research Institute, JAPAN TOBACCO INC.JAPAN TOBACCO INC.JAPAN TOBACCO INC.Senior Research Scientist, Chemical Research Laboratories, Central Pharmaceutical Research Institute, JAPAN TOBACCO INC.Executive Research Scientist, Chemical Research Laboratories, Central Pharmaceutical Research Institute, JAPAN TOBACCO INC.Discovery of Enarodustat （Enaroy®） as a novel HIF-PH InhibitorHIF-Prolyl Hydroxylase阻害薬 Enarodustat（エナロイ®）の創製
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