MEDCHEM NEWS Vol.32 No.2
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5. おわりに80AUTHOR参考文献 1) Uchida S., et al., Mol. Pharm., 17, 3654‒3684 (2020)して用いた場合でも、そのタンパク質レベルでの発現が投与後3日間にわたって検出されたことから、3日後も細胞内に残存したmRNAからタンパク質が翻訳されていたと推測される。一方で、同じレポーターを用いた場合、OligoArgからのタンパク質発現は、1日後には検出感度以下に低下していた。なお、mRNAの細胞内半減期を向上させる戦略として、ここで述べたようなカチオン構造の設計のほかに、mRNAを環状化しエキソヌクレアーゼ分解を抑制する方法も検討されている18)。 mRNAワクチン、医薬は一部の応用において有望な成果が得られているものの、まだ適応は限られている。筆者らは、高分子ミセルの特徴を踏まえ、mRNAの問題点の克服や適応の拡大に取り組んできた。実際に、その高い安全性を踏まえた局所投与による組織修復、保護治療、全身投与における肝臓以外の臓器の標的化、カチオン構造の精密設計による細胞内mRNAの長寿命化において、優れた成果が得られた。今後、これらの基盤技術を、それぞれの疾患治療において最適化し、実用化を目指す。 2) Hou X., et al., Nat. Rev. Mater., 6, 1078‒1094 (2021) 3) Pardi N., et al., J. Control. Release, 217, 345‒351 (2015) 4) Igyarto B.Z., et al., Curr. Opin. Virol., 48, 65‒72 (2021) 5) Anttila V., et al., Mol. Ther. Methods Clin. Dev., 18, 464‒472 (2020) 6) Uchida S., et al., J. Biomed. Mater. Res. Part A, 107, 978‒990 (2019) 7) Uchida S., et al., PLoS One, 8, e56220 (2013) 8) Endo T., et al., Drug Deliv. Transl. Res., 2, 398‒405 (2012) 9) Itaka K., et al., Mol. Ther., 15, 1655‒1662 (2007)10) Aini H., et al., Sci. Rep., 6, 18743 (2016)11) Fukushima Y., et al., Biomaterials, 270, 120681 (2021)12) Uchida S., et al., Biomaterials, 82, 221‒228 (2016)13) Dirisala A., et al., Sci. Adv., 6, eabb8133 (2020)14) Schwanhausser B., et al., Nature, 473, 337‒342 (2011)15) Nogimori T., et al., Nucleic Acids Res., 47, 432‒449 (2019)16) Uchida H., et al., J. Am. Chem. Soc., 136, 12396‒12405 (2014)17) Uchida S., et al., Nanoscale, 13, 18941‒18946 (2021)18) Wesselhoeft R.A., et al., Nat. Commun., 9, 2629 (2018)内田智士(うちだ さとし)専門: 核酸医薬、遺伝子治療、バイオマテリアル、薬物送達システム2007年 東京大学医学部医学科卒業同 年 北見赤十字病院初期臨床研修医2013年 東京大学大学院医学系研究科修了、博士(医学)取得同 年 東京大学大学院医学系研究科特任助教2016年 東京大学大学院工学系研究科特任助教2020年より現職スカベンジャー受容体 1979年に、変性低密度リポタンパク質を認識し、除去するための受容体として発見された。その後、変性していないタンパク質、リポタンパク質から、リポポリ多糖などの微生物特有の構造に至るまで、非常に多様な分子を認識することが明らかとなった。機能も、老廃物、病原体の除去から、自然免疫、味覚受容に至るまで幅広い。このような多様性は、スカベンジャー受容体ファミリーが多くの受容体から構成されているだけでなく、さまざまな共同受容体とともに機能内田 智士(京都府立医科大学大学院医学研究科)するためである。 Copyright © 2022 The Pharmaceutical Society of JapanCopyright © 2022 The Pharmaceutical Society of Japan用語解説

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