MEDCHEM NEWS Vol.32 No.2
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3. J-PUBLICの特徴73図1 運用の全体像年に20万規模の化合物の直接交換を開始し、ライブラリの多様性が重要であることを報告した2)。日本でも2014年にアステラス製薬株式会社と第一三共株式会社がライブラリ交換を行うなど、ライブラリを門外不出の財産と考える意識に変化が生じている。 オープンイノベーションが盛んになるにつれ、製薬企業が提供したライブラリをアカデミアが利用する取り組みが始まった。日本でも製薬企業から提供された化合物ライブラリを活用し、産学協働スクリーニングコンソーシアム(DISC)が官主導でつくられ、産官学での創薬活動を効率化する取り組みがなされている。しかし、製薬企業が利用可能な仕組みとはなっておらず、アカデミアも企業との共同研究や導出が決まった時点で化合物の構造情報が開示となるなど制約がある。 こうした背景を受け、国内企業が適切な化合物数と多様性を維持したライブラリを共同でつくり上げるために立ち上げたコンソーシアムがJ-PUBLICである。多様性あるライブラリは単に多くの化合物を集めればよいというものではないため、まずは化合物を共有して充足すべきケミカルスペースの議論を深めることが重要と考えた。そこで、アステラス製薬が各社に先立ち化合物を供出することでパブリックライブラリを構築し、早期に改良点の抽出を行うことにした。この方針により、発足1ヵ月後の2020年5月には“会員(企業)”がパブリックライブラリの活用を開始することができた。3-1.J-PUBLICの仕組み J-PUBLICは、各社の代表で構成される意思決定機関である「協議会」、協議会の意思決定をサポートする 「幹事会」、各業務の運営サポートを行う「事務局」、ライブラリの質に責任をもつ「化合物選抜チーム」、ライブラリの管理に責任をもつ「ライブラリ管理チーム」、アカデミアの活用に責任をもつ「産学連携チーム」で運用される。 運用の全体像を図1に示した。化合物の運用管理は、DMSO溶液化合物をAxcelead Drug Discovery Partners株式会社、粉体化合物をキシダ化学株式会社にそれぞれ業務委託している。会員は参加料の支払いによりパブリックライブラリを利用できる。J-PUBLICは参加料をライブラリ管理会社への保管料支払い等に充てている。会員が管理会社と直接、化合物の利用申し込み/受領を行うことで、事務局も含め誰がどの化合物を利用しているかわからない仕組みとなっている。3-2.ライブラリ構成 パブリックライブラリの用途として、HTSやヒット化合物の活性確認、合成展開する化合物を選ぶための類 J-PUBLICは、利用価値のあるライブラリとするため、使用目的を鑑みたライブラリ構成とし、化合物構造の閲覧や公表の自由度を高めている。

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