MEDCHEM NEWS Vol.32 No.2
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4. NTD Drug Discovery Booster68Fig.1  DNDiの開発品ポートフォリオ(2021年12月現在) https://dndi.org/research-development/portfolio承認を得た。 リーシュマニア症については、いくつかの開発品目がパイプラインから脱落したものの、武田薬品工業株式会社とのS07および、東京大学医科学研究所および株式会社ジーンデザインとのCpG D35の開発段階が先のステージに進むとともに、DNDI-6174についてはエーザイ株式会社とのパートナーシップ契約がまとまり、いずれもGHIT Fundから開発費の支援を受けている。このように、多くの日本のパートナーと連携しているリーシュマニア症プログラムでは、臨床第一相試験前後に多くの開発候補品があり、今後、第二相以降の臨床試験が進むことが期待されている。 シャーガス病については、全体的にリーシュマニア症に比べて創薬が難しいとされているものの、いくつかの早期探索段階で活発な研究が続いている。また、2020年にはCOVID-19についても基礎から臨床までの研究を開始した。特に臨床段階では、アフリカの複数国において、軽症・中等症のCOVID-19患者の重症化防止を目的とした現行医薬品の適応外使用について、アダプティブ・デザインを用いた臨床試験を実施している。 DNDiの特徴は、創薬・探索段階から前臨床研究、臨床試験を経て開発した薬剤を、必要とする患者さんに届けるアクセスの段階まで、一気通貫に多様なパートナーとともに活動を行っていることにある。本稿でお話するNTD Drug Discovery Booster(Booster)は、上記のさまざまな研究開発ステージのうち最も始めの段階にある創薬のプロセスにおける、製薬企業各社との共同プロジェクトと位置づけられている。 筆者らはこれまで、いかに効率よく、しかも少ない費用で有望なヒット化合物を見出せるかに知恵を絞ってきた。そこで注目したのが、製薬企業がもつ巨大な化合物ライブラリーの活用である。コンソーシアムをつくって何社もの膨大なライブラリーを同時に検索し、選ばれた化合物の活性を調べ、参加企業によるコンソーシアムでその化合物を磨いてゆく、しかもパートナー間での化合物情報は伏せたまま・・・そんなことが果たして可能であろうか? DNDiはその仕組みを詳細につくりこみ、最終的には、日本の製薬企業であるアステラス製薬株式会社、エーザイ株式会社、塩野義製薬株式会社、武田薬品工業株式会社の4社を含む世界の製薬企業8社の参加とGHIT Fundなどの支援を得て、Boosterプロジェクトを実施してきた。 Boosterのプロセスを簡単に紹介する(Fig. 2)。まず、

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