MEDCHEM NEWS Vol.32 No.2
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(A)(C)(B)(A)人工アジュバントベクター細胞療法のメカニズム(B) iPS細胞由来NKT細胞によるがん治療(AMED、千葉大学プレスリリースより) (C) iPS細胞由来網膜組織移植(AMED、神戸アイセンター病院プレスリリースより) 63図4 これまでの成果正常な網膜変性した網膜移植後の網膜https://www.amed.go.jp/news/release_20200629.htmlhttps://www.amed.go.jp/news/seika/kenkyu/20201118-01.htmlキラーT細胞を誘導して獲得免疫を活性化することにより、双方の免疫機能によって効果的にがんを攻撃する。さらに、エーベックでは、抗原特異的メモリーT細胞の誘導により、長期間にわたる抗腫瘍効果も期待される。こうした複合的な免疫機能の作用は、生体における樹状細胞の機能を最大限発揮させることに基づくものであり、藤井チームリーダーらの長年にわたる基礎研究がDMPの支援の下に実用化に結びついた成果である。 エーベックは、2017年より東京大学医科学研究所において急性骨髄性白血病を対象とする医師主導治験を開始し、2019年にはアステラス製薬株式会社と、がん領域を対象疾患として全世界における独占的ライセンス契約を締結した。3-2.iPS-NKT細胞によるがん治療プロジェクト ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)等に続く第4のリンパ球と呼ばれる。NKT細胞は、がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化させる作用をもち、高い抗腫瘍効果が見込まれるが、生体内にわずかにしか存在しないため、治療に必要な細胞数を得ることが非常に難しいという課題があった。 生命医科学研究センター免疫器官形成研究チームの 古関明彦チームリーダーらは、この課題を解決する方法として、iPS細胞技術を用い、NKT細胞への分化能力をもつiPS細胞を体外で無制限に増殖させた後、NKT細胞へ分化誘導することで、治療に十分な品質と量の

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