MEDCHEM NEWS Vol.32 No.2
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産総研製薬協東大創薬機構抗体先端計算科学タンパク質解析創薬分子設計創薬化学シード化合物探索ケミカルバンク3.これまでの成果62副プログラムディレクター(医師)マネジメントオフィスプログラムディレクターポートフォリオマネージャープロジェクトリーダー臨床開発支援室事業開発室図3 DMPの運営(マトリックスマネジメント)環境資源科学テーマリーダー創薬・医療技術シーズ理研ライフサイエンス系研究センター創薬・医療技術基盤ユニット(理研研究センター)生命機能科学テーマリーダー大学・研究機関生命医科学バイオリソース(理研)ベンチャー製薬企業などiPS細胞研究計算科学創薬AI連携理研鼎業病院機構TRセンター外部基盤EXIT用性のある技術としての確立を推進できることである。そのため、プログラムでは、創薬研究全般をマネジメントできる多様な人材を揃えている。バックグラウンドとして有機合成、分子生物学、薬理学、生化学、細胞・再生医療等の研究歴を有する人材でポートフォリオマネージャーを構成し、テーマリーダーが研究計画を企画・立案し、実行できるように協力・支援している。 研究センターに設置された各種の創薬基盤機能は、テーマリーダーおよびマネジメントオフィスと協力して横断的なチームを構成し研究開発を推進する。さらに、臨床試験等への橋渡し段階においては、非臨床試験や臨床研究・治験の規則に精通した専門人材が参画してい る。また、マネジメントチームは、テーマリーダーが提案する研究計画について、先行技術・特許等の調査、研究費の支援や研究ステージの確認等も行う。このようなマトリックスマネジメントを展開することにより、創薬・医療技術に関するテーマやプロジェクトを、競争優位性をもって推進できる体制を実現している。 本プログラムの臨床ステージアップ/企業ライセンス16件という成果のうち、9件は新規ターゲットに着目しスクリーニングを経て製品候補に至った低分子、抗体医薬であり、7件は新たなモダリティーと捉えられる細 3-1.人工アジュバントベクター細胞プロジェクト 人工アジュバントベクター細胞(artificial adjuvant vector cells:aAVC(エーベック))は、生命医科学研究センター免疫細胞治療研究チームの藤井眞一郎チームリーダーが開発した、免疫細胞を活用した新たな治療技術である(図4A)。 いわゆるがんに対する免疫療法では、生体に備わった防御機構である免疫機能を活性化してがんを攻撃する。免疫システムには「自然免疫」と「獲得免疫」がある。自然免疫は、外界から侵入した病原体や病原体に感染した細胞、がん細胞のような異常をきたした細胞等を、初期段階で非特異的に攻撃する。獲得免疫は、リンパ球由来の抗体や多様な細胞性免疫応答によって特定の異物を強力に認識し排除する機能を有する。 エーベックは、自然免疫を活性化させる糖脂質とがん抗原を搭載した改変ヒト細胞である。従来のがん免疫療法の多くは、自然免疫または獲得免疫のいずれかを活性化するものであった。これに対しエーベックは、糖脂質がナチュラルキラーT(NKT)細胞(後述)を介して自然免疫を活性化するとともに、がん抗原が抗原特異的胞・再生医療分野での成果である。今回は、その中で も、今後の創薬に大きなインパクトを与える可能性のある新規モダリティーとして3つのプロジェクトを紹介する(図4)。

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