●ステム -vimab(-ビマブ)[ウイルスに作用するモノクローナル抗体]●ステム「-vimab」をもつ医薬品48定義:-mabmonoclonalantibodies(モノクローナル抗体)1.Palivizumab(パリビズマブ、アストラゼネカ、2002年承認)2.Casirivimab/Imdevimab(カシリビマブ/イムデビマブ、中外製薬/ロシュ/Regeneron、2021年特例承認)3.Sotrovimab(ソトロビマブ、グラクソスミスクライン/VirBiotechnology、2021年特例承認)4.Tixagevimab/Cilgavimab(チキサゲビマブ/シルガビマブ、アストラゼネカ、日本未承認/2021年米国緊急使用許可)5.Bamlanivimab/Etesevimab(未定、イーライリリー/AbCellera、日本未承認/2021年米国緊急使用許可)6.Ansuvimab(未定、日本未承認/2020年米国承認)7.Atoltivimab/Maftivimab/Odesivimab(未定、日本未承認/2020年米国承認) ウイルスに作用するモノクローナル抗体を定義するステムとして「-vimab」がある1)。ステム「-vimab」をもつ医薬品として、幼児等のRSウイルスの感染における重篤化抑制に用いられるパリビズマブ(シナジスⓇ)が承認されている。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として、カシリビマブ/イムデビマブの併用投与薬(カクテル療法薬;ロナプリーブⓇ)およびソトロビマブ(ゼビュディⓇ)が特例承認されている。また、米国ではチキサゲビマブ/シルガビマブの併用投与薬(EvusheldⓇ)、および、Bamlanivimab/Etesevimabの併用投与薬がCOVID-19治療薬や暴露前予防薬として緊急使用許可されている。また、米国では、エボラウイルス感染症治療用としてAnsuvimab(EbangaⓇ)およびAtoltivimab/Maftivimab/Odesivimabの三薬併用投与薬(InmazebⓇ)が承認されている。 RSウイルス感染症予防薬であるパリビズマブは、RSウイルスのFタンパク質上の抗原部位A領域に対する特異的ヒト化モノクローナル抗体であり、RSウイルスが宿主細胞に接着・侵入する際に重要な役割を果たすFタンパク質に結合してウイルスの感染性を中和し、RSウイルスの複製および増殖を抑制する。COVID-19治療薬であるカシリビマブ/イムデビマブおよびソトロビマブなどは、いずれも遺伝子組換えヒト抗SARS-CoV-2スパイクタンパク質モノクローナル抗体である。SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質の異なる部位を認識し、SARS-CoV-2の宿主細胞への侵入を阻害することにより、ウイルスの増殖を抑制する。SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与される。エボラウイルス感染症治療用モノクローナル抗体であるAnsuvimabおよびAtoltivimab/Maftivimab/Odesivimabの三薬併用投与薬は、エボラウイルスの表面にありエボラウイルスが細胞に感染するのに必要なタンパク質に結合するモノクローナル抗体であり、ウイルスの細胞感染能力を中和する。1)Palivizumabで、「-vi-」と「-mab」の間に挿入されている「-zu-」はヒト化抗体を表すサブステムであるが、2017年-vi-viral(ウイルスに作用する)Palivizumab(パリビズマブ) パリビズマブは、遺伝子組換え抗RSウイルスFタンパク質モノクローナル抗体であり、相補性決定部はマウスに由来し、その他はヒトIgG1に由来する。パリビズマブはマウスミエローマ(NS0)細胞より産生される。パリビズマブは450個のアミノ酸残基からなるH鎖(γ1鎖)2本と213個のアミノ酸残基からなるL鎖(κ鎖)2本からなる糖タンパク質(分子量:約147,700)である。Casirivimab(カシリビマブ)、Imdevimab(イムデビマブ)、Sotrovimab(ソトロビマブ) カシリビマブ、イムデビマブおよびソトロビマブは、ともに遺伝子組換えヒト抗SARS-CoV-2スパイクタンパク質モノクローナル抗体であり、ヒトIgG1に由来する。ともにチャイニーズハムスター卵巣細胞により産生される。カシリビマブは、450個のアミノ酸残基からなるH鎖(γ1鎖)2本および214個のアミノ酸残基からなるL鎖(κ鎖)2本で構成される糖タンパク質(分子量:約148,000)である。イムデビマブは、450個のアミノ酸残基からなるH鎖(γ1鎖)2本および216個のアミノ酸残基からなるL鎖(λ鎖)2本で構成される糖タンパク質(分子量:約147,000)である。カシリビマブとイムデビマブは併用投与で承認されている。ソトロビマブは、457個のアミノ酸残基からなるH鎖(γ1鎖)2本および214個のアミノ酸残基からなるL鎖(λ鎖)2本で構成される糖タンパク質(分子量:約149,000)である。H鎖の438および44番目のアミノ酸残基は、それぞれLeuおよびSerに置換されている。のルール改正でこのような由来(種)を表すサブステムは用いないことになった。詳細は、「薬の名前 続:ステムを知れば薬がわかる(第2回)」、PHARMTECHJAPAN,34,1487‒1493(2018)を参照。川崎 ナナ(横浜市立大学) 宮田 直樹(名古屋市立大学)Copyright © 2022 The Pharmaceutical Society of Japanステム手帖-16
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