4. 結び40図4 SARテーブル資料の自動作成システムミストがDMTAのサイクル毎に得られる最新のSARデータをリアルタイムに理解して研究プロジェクトに活用できるようなシステム構築も行っている(図4)。このシステムは、社内データベースに登録されたデータからSARの解析に必要なデータを抽出し、メディシナルケミストが理解しやすいように工夫されたSARテーブルを自動的に作成する。このテーブルは、そのままプレゼンテーション資料としても使用できる形で作成されているので、同僚や上司に内容をわかりやすく共有できる。メディシナルケミストは、SARの理解が短時間で漏れなくできるだけでなく、資料作成等の作業からも解放されるため、現場での評判は大変よい。このような工夫も、人間とAIの協働の促進のために必要である。 自社の創薬研究におけるDx活動の1例として、低分子モダリティの探索研究にAIやロボットを導入し、これらと人間の協働を促進することによりDMTAサイクルを加速する取り組みについて紹介した。創薬モダリティが多様化していく時代において、各モダリティ研究の生産性と質の双方を高い水準で求めていくことは急務であると筆者らは考えている。低分子以外の他のモダリティの探索研究においてもDMTAサイクルに沿った探索研究がなされている。必要なAIやロボットは同一ではないものの、同様の取り組みを展開していくことで創薬モダリティ探索研究全体のDxを推し進め、新たな医薬品を1日でも早く患者さんのもとへ届けられる体制を構築していきたい。謝辞 本原稿の執筆にあたり、アステラス製薬株式会社開発研究モダリティ研究所の瀬尾竜志氏、根来賢二氏、濵口渉氏、生田目一寿氏、岩岡はるな氏、田端健司氏、アドバンストインフォマティクス&アナリティクス室の藤秀義氏、森健一氏のご助力を賜りました。Dxを一緒に推進する他の多くの関係者の皆様も含め、ここに謝意を表します。参考文献1)SasamataM.,et al.,SLAS Technology,26,441‒453(2021)2)OlivecronaM.,et al.,J. Cheminformatics,9,1‒14(2017)3)LeachA.G.,et al.,J. Med. Chem.,49,6672‒6682(2006)4)https://www.lilly.com/discovery/research-and-scientific-discovery(最終閲覧日:2021年9月30日)5)https://www.chemspeed.com/(最終閲覧日:2021年9月30日)6)BertholdM.R.,et al.,ACM SIGKDD Explorations Newsletter,7)https://www.datarobot.com/(最終閲覧日:2021年9月30日)11,26‒31(2009)AUTHOR角山和久(つのやま かずひさ)1999年総合研究大学院大学(国立遺伝学研究所)博士後原田博規(はらだ ひろのり)1991年東京大学大学院農学研究科農芸化学専攻修士課程期課程修了博士(理学)同 年アステラス製薬株式会社(旧山之内製薬株式会社)入社 バイオインフォマティクス研究に従事2006年インペリアル・カレッジ・ロンドン客員研究員2016年AstellasUSLLC出向2017年リアルワールドインフォマティクス&アナリティクス機能アナリティクス&インフォマティクス室室長2019年より現職修了同 年アステラス製薬株式会社(旧山之内製薬株式会社)入社 医薬品化学研究に従事2002年東京大学博士(農学)2003年ペンシルバニア大学客員研究員2009年AstellasResearchInstituteofAmerica出向2016年アステラス製薬株式会社モダリティ研究所主席研究員2020年モダリティ研究所機能分子研究室室長2021年モダリティ研究所モダリティ戦略室室長2022年1月より現職Copyright © 2022 The Pharmaceutical Society of Japan
元のページ ../index.html#40