39図3 ロボットによる細胞系アッセイ体のスクリーニングやSAR(StructureActivityRelationship)データ取得に用いるには課題が多かった。 そこで、フレキシブルな対応が可能な次世代のロボットを活用した、複雑な工程を含む細胞系スクリーニングの高質化と均一化の実現を目指すことにした。2017年導入の双腕型の実験ロボット「Maholo」は、柔軟かつ精微な操作設定が可能で、長期にわたる高質な細胞培養実験を得意としている。2019年導入の全自動細胞アッセイ装置「ScreeningStation」は、細胞のリアルタイムでの観察や継続的な画像データ取得が可能な多検体スクリーニングを得意としている。導入の結果、熟練者であってもすべて均一の細胞をつくるのは難しいといわれるヒトのiPS細胞の培養の自動化を実現した1)。毎回ほぼ同じ状態の細胞を用いた多検体スクリーニングを行えるようになり、迅速なSARデータ取得が可能になった(図3)。 就業時間外にもロボットを活用するため、ロボットメーカーやIT関係者と協働しながら、ロボットの動作状況や細胞の生育状況等を遠隔で確認し、画像データの解析ができるよう「ScreeningStation」を設定して、一連の遠隔操作が完成した。その結果、就業時間外を含む継続的な画像データの取得等が容易になったのみならず、コロナ禍の在宅勤務下での研究推進や共同研究先との画像データの議論が可能になった。 AIを活用した画像解析技術を組み合わせる等、さらに高度な自動化の実現を、複数機関と協働して目指している。3-4.Analyze:ユーザーフレンドリーなシステムの構築 薬効とともにADMETの各種プロファイルを同時に最適化するため、化合物デザインの段階でADMETプロファイルを予測する必要がある。自社データベースには、長年かけて蓄積した、評価条件を揃えた高質のデータが大量に存在するため、これを用いて機械学習による高精度の予測モデルを構築した。この予測モデルは、DMTAサイクル毎に得られる新しいデータを直ちに取り込み、再学習によって更新され、さらに精度を上げる仕組みになっている。 メディシナルケミストは、自身に蓄積された知見に加え、DMTAサイクルの過程において得た最新の知見も取り込んで次の化合物修飾を行うので、協働するAIもまた、同等の知識を取り込んで予測を行う必要がある。筆者らのシステムは、週1回のモデル更新ができるように自動化されている。具体的には、ワークフロー型データ分析プラットフォームKNIMEと社内データベースおよびDataRobot社製の機械学習自動化プラットフォームを連携させて6,7)、データの抽出と前処理から予測モデルの構築と更新までの全工程を自動化したシステムを構築した。また、作成した多数の予測モデルをWebブラウザから利用できるユーザーインタフェースもKNIMEにより作成している。これらのユーザーフレンドリーなインタフェースにより、メディシナルケミストは最新のデータを用いて学習した高精度な予測モデルを化合物デザインのために簡便に利用することができる。 ユーザーフレンドリーという点では、メディシナルケ
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