MEDCHEM NEWS Vol.32 No.1
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38図2  構造発生手法の例3-2.Make:ロボットによる自動合成への取り組み 化合物合成の自動化は近年、欧米製薬企業を中心に積極的に進められている。EliLillyのLillyLifeScienceStudio(L2S2)では、化合物管理から合成、精製、分析、薬理評価等が一区画内でできるよう、それらをレールやロボットアームを使ってつなぎ、遠隔操作も可能なプラットフォームを構築して、オープンイノベーションの拠点となっている4)。 自社においては、コンビナトリアル合成技術を基に、小スケール合成のセミオートメーション化を20年以上前から推進してきた。厳選された約2.5万個のビルディングブロックライブラリーおよび各種自動化機器を活用し、飛躍的な速度での多検体かつ高品質のパラレル合成の体制は構築済みである。多数のデータを迅速に取得できる点で、多くの学習データを必要とするAIとの相性もよく、DMTAサイクルの加速化に貢献している。 また、高次評価用の再合成や中間体合成等はマニュア溶解性やhERG阻害が課題のプロジェクトでは、それらの予測値に高い重みを付けた化学構造をランキング方式で提示する。このようなユーザーインタフェースの工夫で、AIと人間の協働が効率的に実現できるようにしている。3-3.Test:ロボットによる細胞系アッセイ 化合物のハイスループットスクリーニングには、従来からロボットを用いていた。しかし、繊細、あるいは、フレキシブルな動作を含む工程は熟練の研究者が行う必要があり、特に細胞系は、細胞の表現型の変化を捉えるためによく使われる細胞画像データの取り扱いの難しさもあいまって、ロボットの活用は十分ではなかった。さらに、生体生理を反映した細胞評価系は薬効評価に有用だが、複雑な工程を含むため質の均一性を確保しにくく、同一条件の測定数や試行回数が増加する等、多検ル合成によって行われているが、その中の一定の割合は決まった操作による合成を含むため、ここでもロボットの活用を始めた。2021年初頭に導入したChemspeed社製の自動合成機(図1)は、2種の粉体分注モジュール、2種の液体分注モジュール、加熱還流反応や減圧濃縮も実施可能な反応用ユニットをもち、Biotage社製のマイクロウエーブ反応装置も組み込まれており、それらがデンソー社製のロボットアームにて連結されている5)。導入して約半年間で、12種類の反応や後処理工程の一部の自動化に成功した。将来的には、自社で多用する反応の50%の自動化ならびに周辺機器とのインテグレーション、さらには、実験のリモート化を目指している。

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