MEDCHEM NEWS Vol.32 No.1
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5. おわりに25図5 ドッキングスコアとPLIF類似度を用いたin silicoドラッグリポジショニングによるネルフィナビルの同定AUTHORも議論したが、本ケースにおいてもPLIFによる複合的アプローチが重要であると考察できる。 近年、クライオ電子顕微鏡をはじめとする構造生物学技術の発展と、AIを用いた高精度タンパク質立体構造予測手法AlphaFold8)の出現により、プロテオームレベルでタンパク質構造情報を取得できる状況になりつつある。すでにAlphaFoldを用いたヒトプロテオームのタンパク質モデリングデータベース9)も公開されており、世界中でAlphaFoldモデル構造を用いたさまざまな研究がスタートしている。Insilicoドラッグリポジショニング研究においてもタンパク質立体構造に基づく手法がさらに注目されていくことは間違いないが、AlphaFoldのモデル構造もターゲットタンパク質の目的とする活性(リガンド結合状態、活性型、不活性型等)状態を反映しているとは限らない。そのためにも、実用可能なinsilicoドラッグリポジショニングのためには、引き続き各要素技術(ドッキング計算、タンパク質構造バイオインフォマティクス等)のさらなる高精度化と技術の統合化、解参考文献1)XieL.,et al.,PLoS Comput. Biol.,5,e1000387(2009)2)OhashiH.,et al.,iScience,24,102367(2021)3)KimD.,et al.,Cell,181,914‒921(2020)4)https://www.rcsb.org/(最終閲覧日:2021年12月24日)5)JinZ.,et al.,Nature,582,289‒293(2020)6)FriesnerR.A.,et al.,J. Med. Chem.,47,1739‒1749(2004)7)DengZ.,et al.,J. Med. Chem.,47,337‒44(2004)8)JumperJ.,et al.,Nature,596,583‒589(2021)9)TunyasuvunakoolK.,et al.,Nature,596,590‒596(2021)析の高速化への取り組みが重要である。広川貴次(ひろかわ たかつぐ)1993年 東京農工大学工学部物質生物工学科卒業1995年 東京農工大学大学院工学研究科博士課程前期修了1998年 東京農工大学大学院工学研究科博士課程後期単位取得退学(工学博士(2000年))同 年 株式会社菱化システム科学技術計算部システムエンジニア2001年 産業技術総合研究所生命情報科学研究センター研究員2003年 産業技術総合研究所生命情報科学研究センター研究チーム長2013年 産業技術総合研究所創薬分子プロファイリング研究センター研究チーム長2021年より現職Copyright © 2022 The Pharmaceutical Society of Japan

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