MEDCHEM NEWS Vol.32 No.1
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24図3 相互作用(PLIF)類似度法の考え方図4 化合物選定におけるPLIF類似度の利用法ドッキングスコア(kcal/mol)とN3阻害剤との相互作用類似度(ProteinLigandInteractionFingerprint:PLIF類似度)の2パラメータにより評価した。PLIF類似度とは、テンプレートとなる化合物とタンパク質の相互作用情報をタンパク質配列のビット情報として表現する手法7)であり、多くのインシリコ創薬研究において医薬品候補の高いヒット率に貢献している。 図3は、N3をテンプレート化合物としたメインプロテアーゼとのPLIFを生成したものである。医薬品のドッキング候補データは、N3と同様にPLIFが計算され、N3のPLIFとのビット情報の類似性をTanimoto係数にてPLIF類似度を比較した(図4)。 最終には、N3化合物とのPLIF類似度が高く、ドッキングスコアも良好な119品目をinsilicoドラッグリポジショニングのヒット医薬品として選定した。本研究は、国立感染症研究所等による活性評価とも連携しており、感染細胞による評価結果で、新型コロナウイルス治療薬の候補の1つとして抗エイズウイルス(HIV)薬ネルフィナビルが同定されていたが、insilicoのヒット医薬品にもネルフィナビルが選定されており、ネルフィナビルがメインプロテアーゼの阻害剤としてリポジショニングされることが期待できる結果であった。 図5中には、ネルフィナビルの予測結合図(左)とinsilicoスクリーニング結果のドッキングスコアとPLIF類似度プロット(右)を示した。ネルフィナビルは、ドッキングスコアのみでは、上位には選定されず、PLIF類似度という情報科学的手法との融合により選定されていることがわかる。タンパク質構造に基づくinsilicoドラッグリポジショニングは、単純なドッキングスコアのみでは、擬陽性の危険性が多いことは3項の先行研究で

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