4. Hitを出す難しさ5. Hitの探索3. Bioinformaticsによる新たな切り口13図1 Rgentaが目指す創薬(Rgenta社より提供) 「どうしたら有望なHitにたどり着けるか?」 Rgentaは、Travis、SimionXiとZhipingWengの3人の共同創業者によって立ち上げられた。合成化学者の観点からRNAiをアプローチしていたTravisに対して、SimonはComputationalBiologistの観点から、またZhipingはComputationalGenomicistの観点からアプローチしていた。SimonはTravis同様Pharmaの出身で、ZhipingはUMassMedicalSchoolの教授職に就いていた。SimonとZhipingはさまざまなヒト組織や細胞から解析されているゲノムデータに着目し、RNA阻害に効果的なターゲットの創出に向けたアルゴリズムを創作していた。この3人の出会いがRgentaのきっかけとなった(図1)。来、このアプローチに研究者は期待と妄想を抱いては、さまざまな試みが行われた。しかし、Risdiplam以外に新たな化合物はなかなか発見されず、RNA創薬においてすべてのアプローチが順調とは言い難い状況にある。そのなかで、Rgentaは何を新たにBiotechに提供するのであろうか? RNA創薬ベンチャーが苦戦しているなか、TravisはPfizer社でRNA創薬の担当をしていた。さまざまなアカデミアやベンチャーの挑戦を製薬企業の立ち位置から応援し、またこのアプローチの本源的な難しさを目の当たりにした。有望なHitがなかなか出ない、あるいはHitが取れてもinvivoでのPOC検証をするに十分なリード化合物まで至れない。 論理的に考えれば、巨大な低分子のライブラリーを駆使すれば、特定の遺伝子に対してSpliceModulatorの探索が可能なはずである。しかしながら、RNA創薬を試みたベンチャーでは巨額の資金を投資しながらも、狙ったようなHitと新たなChemotypeの発見に至っていない。力任せのアプローチではたどり着けないことがわかり、RNA創薬はいかにHitの確率を高めるかに議論が集まる。 アプローチの1つにはHTSのライブラリーの強化がある。mRNAの構造に接触すると知られている化合物のみで構成されたライブラリーなら、より効率的にHitにたどり着けると思われ、国内でもこのアプローチの追求をするベンチャーが伺える。 Rgentaは、自社のBioinformatics技術によって選別した標的に的を絞り、公知情報によるとHTSでスクリーン可能な評価系を整えている。スクリーンを行う化合物群は、他のRNA創薬ベンチャー同様にRNAへの接合の可能性が高いといわれるものを自社努力で揃えている。立ち上げ当初から絶えず新たなChemotypeの化合物を加えては、ライブラリーの強化に努めている。ここでTravisは低分子創薬でも培ってきた経験を活かし、RNA創薬のDruglikeなChemotypeに対するいくつかの法則を立て、それに乗っ取りコアのChemotypeの化合物の合成展開を図り、ライブラリーは規模のみならず内容も充実させる努力を行う。 2021年の時点でRgentaは、誰もが納得するUndruggableといわれる標的リストから複数のHTSの実績を積み上げ、DruglikeなHitが高い確率で得られていることを報告している。今までHitに苦しんできたRNA創薬の業界で、もしこれが本当であればRgentaの技術は素晴らしい功績といえる。同時にHitを候補化合物まで進めることができるかが課題である。 Targetengagement、Structure-baseddrugdesignは、創薬実現の成功確率や、創薬の効率に大きな影響を及ぼすため、KinaseやGPCRといった従来の低分子創薬では、これらは定法ともいえるものとして定着している。従来の標的の多くでは、さまざまな手法で化合物と標的のInteractionを正確に捉えることができ、また立体
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