MEDCHEM NEWS Vol.32 No.1
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5. 最後に11AUTHORバンクについても多岐にわたり品質を確認することで、安全性リスクを最小限とした製品製造が可能になった。造血幹細胞移植後の標準治療抵抗性急性GVHDを対象に実施した第I/Ⅱ相試験および第Ⅱ/Ⅲ相試験では、本品の有効性および安全性が示され、本品は国内初の他家幹細胞製品として承認された。 当社の研究開発は、尿由来製品から始まり、遺伝子組換え技術を用いた成長ホルモン製剤「グロウジェクト®」、国産初のバイオ後続品である腎性貧血治療薬「エポエチンアルファBS注JCR」とそれに続く「ダルベポエチンアルファBS注JCR」、日本初の他家間葉系幹細胞製品「テムセル®HS注」、国産初のライソゾーム病治療酵素製剤「アガルシダーゼベータBS点滴静注JCR」と、バイオ技術を駆使してさまざまな医薬品を世に出してきた。そして、昨年3月には世界初となる血液脳関門通過技術「J-BrainCargo®」を用いたハンター症候群治療薬「イズカーゴ®」の承認を取得した。これは当社が長年蓄積してきたバイオのモノづくりの技術に加え、新薬を生み出す新たなプラットフォーム技術が1つ完成したことを意味する。現在、研究部門では、「イズカーゴ®」を皮切りにライソゾーム病やその他の希少疾患領域において中枢神経系に効果を発揮する医薬品の開発を精力的トランスフェリン受容体(TfR) 生体内には、TfR1とTfR2と命名されている2種類のTfRが存在しており、いずれも鉄イオンを抱えたトランスフェリンと結合してエンドソーム内に取り込み、そこから遊離してきた鉄イオンを細胞内に吸収している。鉄イオンを吐き出したトランスフェリンは、TfRと結合したままリサイクルエンドソーム経由で細胞膜へ戻り、そこでTfRから解離して循環血中へと戻る。脳毛細血管の内皮細胞ではTfR1が高発現しており、TfR1に結合したトランスフェリンの一部は、トランスセルラーパスウェイと呼ばれる経路を介して脳実質側へ輸送される。「J-BrainCargo®」は、この機構を利用することで脳実質内に薬剤を輸送している。なおTfR2は、主に肝臓でのトランスフェリン取り込みに用いられている。に進めている。また、「J-BrainCargo®」の積極活用と並行し、次なる独自の創薬基盤技術を生み出すことで、患者さんやその周りの方々の人生を変えられるような、本当に意味のある治療薬の開発に向けJCRの「一歩前に出る」挑戦は続く。薗田啓之(そのだ ひろゆき)2003年日本ケミカルリサーチ株式会社(現JCRファーマ高橋健一(たかはし けんいち)1988年日本ケミカルリサーチ株式会社(現JCRファーマ平戸徹(ひらと とおる)2004年日本ケミカルリサーチ株式会社(現JCRファーマ株式会社)入社2010年神戸大学大学院工学研究科博士課程修了博士(工学)創薬研究におけるユニットリーダー、事業開発および経営企画との兼任を経て、2018年に執行役員・研究企画本部長2020年取締役(研究開発担当)研究本部長2021年常務取締役(研究・経営戦略担当)研究本部長1997年~1999年 科学技術振興事業団ERATO高井生体時株式会社)入社系プロジェクト2014年研究本部創薬基盤研究部長2021年研究本部サイエンティフィックエキスパートフェロー(兼)基盤技術研究所所長株式会社)入社2012年研究本部研究所長2014年執行役員・研究本部長2020年研究本部シニアフェロー2021年研究本部創薬研究所長Copyright © 2022 The Pharmaceutical Society of Japan高橋健一(JCRファーマ株式会社)Copyright © 2022 The Pharmaceutical Society of Japan用語解説

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