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健康豆知識

とても身近な疾患~国民の2人に1人がアレルギー~


【はじめに】

 近年の研究によると、気管支ぜん息や花粉症などのアレルギー疾患は、ここ数年で患者数が急増していて、国民の約半数が何らかのアレルギー疾患にかかっていると推定されています。
 アレルギー疾患と一言で言っても、気管支ぜん息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症、食物アレルギーなど、様々あります。特にスギ花粉症は、罹患率が高く、スギ花粉が引き金となり、アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎などの症状を引き起こします。アレルギー疾患の患者さんの多くは同時に複数のアレルギー疾患を患うため、症状も限局的なものから全身に渡るものなど様々です。特にアレルギーのお薬は、気管支喘息の吸入ステロイド薬、アトピー性皮膚炎の軟膏(塗り薬)、スギ花粉症の舌下免疫療法など、特徴的なお薬が多くあります。

【吸入薬】

 気管支ぜん息は、空気の通り道となる気管支に炎症が起こり、狭くなってしまい、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」し始めて咳がでたり呼吸が苦しくなったりを繰り返す病気です。その炎症を抑え、発作を予防するのが「吸入ステロイド薬」です。「吸入ステロイド薬」が普及してから、ぜん息で亡くなる人や入院する人の数が大幅に減少しました。吸入ステロイド薬の吸入器には様々なタイプがあり、それぞれに特徴があります。

《ドライパウダー》
粉末の薬剤が吸入器に充填されており吸入口に口を密着させて、自分のタイミングで息を吸い込み薬剤を気管支に取り込みます。自分のタイミングで吸入することができる長所がある一方で、一定以上の吸い込む力が必要になるため、子どもやご高齢の方に適さないことがあります。

《エアゾール》
ガスの圧力で薬剤を噴射します。吸入するときは薬の噴射と薬を吸い込みタイミングを合わせる必要があります。タイミングを合わせるのが難しい方には、スペーサーと呼ばれる吸入補助具を合わせて使用する場合があります。

《ネブライザー》
機械で薬液を霧状にし、マウスピースやマスクを装着し通常の呼吸で吸入します。ドライパウダーやエアゾールで吸入できない方でも確実に吸入することができる一方、機械が大きく持ち運びが大変なことや吸入に時間がかかることが短所といわれています。

 気管支ぜん息の治療は、長期間になり症状がなくても指示通りに毎日続けることが大切です。吸入器を正しい方法で、また毎日忘れずに続けるのはなかなか難しいです。医師や薬剤師に相談したり、正しくできているかをチェックしてもらうのがおすすめです。

【軟膏の塗り方】

 アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹が、慢性的によくなったり悪くなったりを繰り返す病気で皮膚のバリア機能(外からの様々な刺激、乾燥などから体の内部を保護する機能)の低下していることが原因と言われています。刺激をおさえたり、乾燥を予防するために軟膏での治療を行います。

《軟膏の塗り方》
まずは塗る人の手をきれいに洗います。入浴後は、皮膚の乾燥を防ぐためなるべく早めに軟膏を塗りましょう。かゆみがある湿疹の部分はデコボコがあるため、薄く塗ったりすり込んだりすると効果が現れにくくなります。たっぷりと載せるように塗ると、湿疹の部分にしっかり薬がつき、より効果的になります。塗った部分がテカるぐらい、ティッシュがくっつくぐらいの量を塗るのが目安です。
 軟膏の塗る部位、塗る場所、塗る頻度は、医師の指示通りに行いましょう。わからないようでしたら、医師や薬剤師に確認するようにしましょう。

【舌下免疫療法】

 スギ花粉症の治療法としてアレルゲン免疫療法があります。このアレルゲン免疫療法は主にアレルゲンを含む治療薬を皮下に注射する「皮下免疫療法」が一般的でしたが、近年では治療薬を舌の下に投与する「舌下免疫療法」が開発され、スギ花粉症で苦しんでいる多くの方が自宅で治療を受けれるようになりました。

【おわりに】

 アレルギーについてより詳しく知りたい方は、日本アレルギー学会、厚生労働省が運営しております「アレルギーポータルサイト」をご覧ください。アレルギー治療は、根気強く続けることが大切です。治療中に不安に感じるようなことがあれば、かかりつけの医師や薬剤師に相談しましょう。

2022年6月
担当 有限会社ふれあい薬局 小児アレルギーエデュケーター 薬剤師 生井栄佑