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健康豆知識

コグニサイズ®を知っていますか?


【はじめに】

 認知症といわれる病気が予防できるということをご存知でしょうか? 誰にでも「最近、少しもの忘れがひどくなったな?年のせいかな?それとも認知症?」と考え、不安に感じることがあるのではないでしょうか。高齢社会白書(令和2年版)によると日本の65歳以上人口は、3,589万人となっており、総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は28.4%となっています。高齢になると認知機能が低下して認知症になるわけではありません。健常者(健康な人)と認知症の人との間には軽度認知機能障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)といわれるグレーゾーンの状態があります。その状態の時に何もしなければ5年後に40%の人は認知症になるといわれています。2025年には日本では65歳以上の4人に一人はMCIもしくは認知症といわれる状態になるといわれています。

【認知機能の低下を遅らせる】

 「認知症」という言葉をよく聞くと思います。そもそも認知症という言葉は病名ではありません。記憶力が悪くなったり、料理の手順を忘れてしまったり、という認知機能が低下してくる状態を指しています。ですから、花粉症のようにある日、突然その症状が始まるわけではありません。年をとることで足腰が弱くなり、家に閉じこもりがちになったり、何をすることも億劫になり人との会話をしなくなったりすると、脳は刺激を受けなくなります。刺激が足りなくなった脳細胞はゆっくりと活動を低下させていきます。脳の中の海馬といわれる記憶をつかさどる部分が影響を受けやすく、細胞が萎縮していきます。そのため物忘れという症状が出てくるようになります。昨日の晩ご飯は何を食べたか、すぐに思い出せない程度であれば問題はありませんが、食べたことや内容を全く思い出せないようであれば、その時の状況というエピソードを忘れてしまっているので認知機能が低下してきているということになります。その記憶を司る海馬ですが、年齢と共に1~2%程度減少していきます。そのため、先に書いたMCIというグレーゾーンの状態が生まれてくるのです。幸いなことにこの状態であれば脳に刺激を与えることを行うように心がければ、戻ること(海馬細胞の再生)が可能であるといわれています。効果的に行う方法の一つとしてコグニサイズ®という方法が国立長寿研究医療センターで開発されています。

【コグニサイズ®とは】

 コグニサイズとは、国立長寿医療研究センターが開発した運動と認知課題(計算、しりとりなど)を組み合わせた、認知症予防を目的とした取り組みの総称を表した造語です。由来は英語のcognition(認知)とexercise(運動)を組み合わせて、cognicise(コグニサイズ)といわれています。行う運動は全身を使った中強度程度の負荷がかかるもの(軽く息がはずむもの)で脈拍数が上昇するもの、そして運動を行いながら認知課題行います。認知課題は運動と一緒に行うことによってたまに間違えてしまうくらいの難易度の認知課題を行っていきます。 まず中強度程度の負荷がかかる運動を知るために自分の心拍数は測り、図のように計算してみましょう。心拍数は自分の手首の付け根を反対の手の指3本で軽く押さえて1分間の拍動を数えます。自宅で血圧を測る方であれば血圧測定時に血圧計に表示されます。 さて、ご自分の目標心拍数は計算できましたか?ここでは運動強度を60%としましたが、あまり身体を動かさない方は50%ぐらいからスタートされるとよいかもしれません。

【さあ、やってみましょう!】

運動といってもジムに通うなど特別なことは必要ありません。歩くことが一番お金もかからずリーズナブルです。新型コロナ感染が怖いので外を歩きたくないという方は自宅で足踏みをすることで行いましょう。立ち上がるとふらつくけれど行ってみたいという方は安定をした椅子に腰かけて足踏みと腕ふりの動作を行いましょう。まず始めにストレッチを行い、筋肉をほぐすことを忘れずに行ってください。

① 足踏みコグニサイズ 背筋を伸ばして同じペース足踏みを行います。時間は1回10分から15分程度、強度を上げたい方は太腿を上げることを意識したり、ペースを早くしたりしてみてください。認知課題はご自分で楽しいものを考えてみてください。例えば、100迄数えていき、次は100からカウントダウンする。3の倍数では手をたたくなど。行った後で、目標心拍数になっているかどうかを始めのうちは確かめてください。

② コグニウォーク 背筋を伸ばして正しい姿勢でウオーキングを行います。しっかりと腕をふり、歩幅を大きく地面をけって歩きましょう。認知課題は目に入るものでしりとりなどを行ったり、すれ違う車のナンバーの数字を足し算したり引き算したりなど行ってみてください。

【終わりに】

 いかかでしょうか?行ってみていただけたでしょうか?こんな簡単なことに効果があるのだろうかを思われているでしょうか。できれば毎日行ってみてください。『継続は力なり』です。コグニサイズはすきま時間に行っていただくことができます。認知症の発症を予防すれば自立した生活が長く送れます。そして健康寿命を延ばすことができれば長寿であっても安心です。『よく効く何かいいおくすりないかしら?』といわれますが、特効薬はありません。特効薬はないけれどこれが良いのではといわれている方法はいくつかあります。効果自体は軽微かもしれませんが、研究され結果が出ているものはぜひ試してみましょう。
参考資料
 コグニサイズ…健康長寿ネット
 cogni.pdf

2021年6月
担当 御代の台薬局品川二葉店 押切 康子