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健康豆知識

ヘルスリテラシーを身に着けよう!


【はじめに】

 2020年は新型コロナウイルスの影響により私たちの生活様式は大きく変化しました。これまで体験したことのない事象に、インターネットやSNS上の氾濫した情報、ワイドショーなどの一部メディアによる偏った情報に困惑、不安を感じた方も少なくないと思います。実際、誤った情報により買い占め等の問題も発生しました。

 皆様はヘルスリテラシーという言葉をご存じでしょうか。「リテラシー」とは「知識や情報を有効活用できる能力」のことを指します。すなわち「ヘルスリテラシー」は「健康に関する知識や情報を正しく集め、活用する」ことです。新型コロナウイルスの情報に限らず、医療に関わる情報は無数に存在します。では、実際私たちはこの情報が溢れた日常でどのように正確な情報を集めれば良いのでしょうか。今回は身近なものに焦点を当ててご紹介していきます。

【数字の捉え方】

 物事を数字で示されると、「あ~、なるほど。」とつい納得してしまいがちです。しかし、数字の表し方によっては誤った理解をしてしまいます。例えば、ある商品がスーパーに並んでいて、Aという商品紹介には、「成分1g配合!!」と書かれ、Bという商品には「成分1,000mg配合!!」と書かれています。皆さんはどちらに目を惹かれますか?AとBは単位が違うだけで同じ量なのですが、桁数が多いBの方が、目に付きやすく、量が多いと感じてしまう人もいます。

 次に、あなたが妊娠していたとして、ある薬を服用すると何かしらの奇形を持った子供が生まれる確率が2倍になると言われました。2倍と聞いてあなたはどう感じたでしょうか。あなたはその薬を飲みますか・・・。ここで考えるべきことはまず前提として、何と比較して2倍になるのかということです。一般的に何かしらの奇形を持った子供が生まれる確率は約3%と言われています。すなわち、2倍に増えるとは、確率が3%から6%に増えるということです。逆の視点からすると、正常な子供が産まれる確率は97%から94%に減るということです。これが大きいか小さいかと捉えるのは人それぞれの感覚になります。数字の捉え方は様々ですが、今ある一点だけに捉われず、比較している対象、数字の裏側も意識することが大事です。

 テレビや雑誌、広告でよく見かける「このサプリメントを飲んだら〇〇に効果があった」という体験談が商品紹介に利用されていることがあります。また、影響力が大きい有名人を利用したステルスマーケティングのような広告も存在します。これらは効果があった人のみに焦点を当て、効果がなかった人たちの情報は無視されています。仮に100人飲んで1人に効果があったとして、効果のなかった99人については触れられず、唯一効果があった1人にのみ焦点が当たっている可能性があるということです(そもそも効果があったという体験談自体が怪しいですが)。1人の情報を鵜呑みにするのではなく、その母数にも気を付ける必要があります。

【検索の方法】

 現在、インターネットは子供から高齢の方まで幅広い年代の方に使われています。ある言葉を検索すると、自分が知りたい情報に辿り着けないという経験をしたことがあると思います。また、広告ページが表示され誤った情報に誘導されている可能性もあります。中立的な情報を検索するのに便利なのが「ドメイン」指定です。ドメインとはアドレス後方にある「co.jp」等の箇所を指します。検索ワードに「go.jp」「ac.jp」「lg.jp」を追加することで政府、大学機関、都道府県などが出している情報に限定して検索結果が表示されます。

 他の方法として、例えばパソコンで検索する際に「YAHOO!」の場合、検索box横にある「+条件指定」をクリックするとドメインを選択できます。「google」では「設定」⇒「検索オプション」の順にクリックするとドメイン指定を行うことができます。このようにドメイン指定で検索することで、信頼性が高いサイトにアクセスできる可能性が高まり、検索時間の短縮にも繋がります。ぜひ一度、お試しください。

ドメイン機 関 
go.jp政府機関、独立行政法人等
ac.jp大学、学校法人等
lg.jp地方公共団体とその行政機関等

【おわりに】

 テレビ等のメディアによる情報は一方向性の受動的な情報であり、インターネット検索による情報は自分自身が興味のある範囲内での偏った情報の可能性が高いです。また、医療の情報は日進月歩であり、情報が最新なのかどうかも重要です。

 ご自身で正しい情報の元、納得できる判断が出来るよう、信頼できるかかりつけ医やかかりつけ薬剤師と日頃からコミュニケーションを取り、良好な関係を築いていくことをお勧め致します。

2020年11月
慶應義塾大学病院 薬剤部 清宮 啓介