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健康豆知識

認知症の「気づき」と「つなぎ」のために
~自然な会話の中で、認知症の可能性を探る方法「TOP-Q(トップQ)」~


【はじめに】

 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)として2015年に国から発表された6つの柱の中の1つに、『早期診断・早期対応の体制整備』が謳われていることをご存知でしょうか?これによると地域の医師・歯科医師・薬剤師、介護職を含めた「地域の認知症対応力向上」が期待されています。そして認知症を早期に見つける「気づき」と、早く診断治療の舞台にのせる「つなぎ」がKey wordsとして挙げられています。現在、早期に見つける方法として長谷川式認知症スケールなどがあります。これは既に広く使われていますが、ご本人が検査を受けることを嫌ったり、検査する側も忙しい外来の中でお一人に約15~30分もかかってしまうので必要であることはわかっていてもできないと言われてしまいます。これでは果たして認知症を早くみつけることが、十分にできているのか疑問になってしまうことがあります。質問される方もする方も負担にならずに、認知症を見つける方法があったらいいと思いませんか?このような問題を解決するために、大森医師会が作成した2~3分の自然な会話の中で認知症の可能性を探る方法TOP-Q(トップQ)をご紹介します。

【TOP-Qによる認知症の気づき】

もの忘れ検査を受けに病院に行くの、嫌じゃありませんか?

 あなたご自身、いつも接しているご家族、ご友人が少しおかしい?もの忘れかな?と思ったとき、皆さんは病院に行きますよね。その時、検査をされて嫌な思いをされたことがありませんか? 「100引く7は幾つ? それから更に7を引くと? 桜・猫・電車覚えておいてください。後でまた聞きますから・・・」。ご自分は認知症ではないと思っているのに、突然こう聞かれてしまいますと、嫌だな~、私をバカにしている、二度とあの病院に行きたくないと思ってしまわれても仕方ないと思います。また、ご家族としても“私の”母親が、また“あの”親族が認知症と診断されるのが怖い、できたら病院に連れていかないでこのまま今まで通り、みんなで住んでいたい、と思うことが多いのです。

自然に見つけられる方法TOP-Q (トップQ ) があります:気づき

 私の目の前にいる、いまこの原稿をお読みになってくださっているあなた(Aさん)に、例えば以下の様なお話しをしたとします。皆さんはこの会話により、認知症の検査をされているとお感じになりますでしょうか?
私「・・・Aさん、ちょっと疲れたでしょ。少し運動をしましょう!はい、このように両手を前にならえ!をする時のように突き出して、そうそう、それでキラキラ星をやってください。今度は両手を挙げて背伸びをして背中をのばす。ハイいいですねぇ。今度はこれをよく見て真似してくださいね。(下の写真の様な2つの形を作ってもらう)。指先に最近しびれはないですか?手足が冷えないですか?ところでAさん、50年前の東京オリンピックの時、どちらにお住まいでした?その時、おいくつでした?」
Aさん「昔のことなどわからない、忘れてしまったな」
私「お誕生日っていつでしたっけ?」
Aさん「・・・(沈黙)」
私「そう、でも元気で長生きして、この地元の有名なお祭りにまた行きましょうね。5年後のそのお祭りの時は、Aさん、おいくつになります?」
Aさん「え~と61歳かな!」

いかがでしょうか?違和感がありましたでしょうか?この一連のお話の中で、絵の中にあったキツネ、ハトができなければ、それぞれバツ(×)が1つずつ、マイナス50の計算(50年前の年齢)、プラス5の計算(5年後の年齢)、誕生日のいずれか1つができないと×がもう1つ。医師会の研究によりますと、×が2つ以上になると、もの忘れ(認知症)が始まっている可能性があるといえる(陽性判別率90パーセント以上)ことが判明しています。
 この方法は、自然なお話しを通して、質問を受ける方々のプライドも傷つけず、聞き手も2~3分で終わる簡単な見極め方法(通称TOP-Q:トップQ)として、2018年3月に、東京都と東京都医師会から発刊された冊子「住み慣れた街でいつまでも~認知症の人と家族にやさしいまち東京~」に紹介されました。この方法は医師・歯科医師・薬剤師等の医療関係者だけでなく、ケアマネジャーなどの介護関係者、さらには高齢となられたご両親や親戚の方に対してお子さんが簡単に行える方法として最近広まりつつあります。

【2】TOP-Qでバツマークが2つ以上の時には?:「つなぎ」

あなたの大切な方がTOP-Qで認知症を疑われた時には是非医療機関への受診をお奨めください。でもどうしても私は認知症ではないから受診しないと言われてしまう場合にはどうしたらよいか、とても気をもんでしまいます。このような場合には、私も脳の健康診断を受けるから、お父さんお母さんも一緒に首より上の健康診断を受けに行こうよ!と言ってみてください。貴方自身は検査を受けなくても結構ですから。なんとか、診断と治療に繋げるために。


2018年10月
医療法人社団 くどうちあき脳神経外科クリニック 工藤千秋