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健康豆知識

薬局での血液検査とセルフメディケーション


【はじめに】

 皆さんは薬局で生活習慣病に関する血液検査が出来ることをご存知でしょうか?2016年1月時点で、1,160ヵ所の薬局が厚生労働省に届け出て、検体検査室を設置しています。薬局での検査を希望される人は、特定健康診査や健康診断ではないこと、検体採取や採取前後の消毒・処置は検査を受ける人が行うこと、測定結果は検査を受けた人が判断するものであること、穿刺による疼痛や迷走神経反射が起こる可能性があることなどの説明を受けて同意した後、血液検査を行うことができます。
 セルフメディケーションとは、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と世界保健機関は定義しています。健康に過ごすためには、自分の健康は自分で守ることを意識し、積極的に健康管理にかかわることが大切です。

【指先穿刺による測定方法】

 検査を行う際は、薬局の検体検査室において指先をアルコール等で消毒後、自己採取用の細い穿刺器具で指先を穿刺して微量(米粒状)の血液を採取し、測定機器を使って検査します(図)。現在、測定可能な項目は、特定健康診査の血液検査で確認できる血糖、脂質、肝機能です(表)。測定項目により使用する測定試薬、測定機器、測定時間、必要な血液量が異なります。また、血糖値のみの測定を行う機器や1度の測定で多項目測定が可能な機器もあるので、薬局に設置してある機器によって測定できる検査項目は異なります。一般に、検査結果がでるのにかかるのは数分です。検査結果から自分の健康状態や生活習慣病のリスクを知り、必要に応じて病院を受診したり、セルフメディケーションに役立てたりすることができます。

【セルフメディケーション】

 生活習慣病が問題となっている現代、セルフメディケーションは日々を健康に過ごすために注目されています。セルフメディケーションのポイントは、①病気や薬についての正しい知識を身につけること、②自分や家族の健康管理に積極的に関わり、日ごろより規則正しい生活を心がけること、③体重、体脂肪、血圧、尿糖等の測定を行い、健康と生活習慣をチェックすること、④薬局で購入できるOTC医薬品(一般用医薬品)を上手に使用して、軽度な体の不調は自分で手当てすることです。薬局での血液検査を活用することも、セルフメディケーションの一環だといえます。
 薬局に勤務する薬剤師は、セルフメディケーションについての最も身近なパートナーでありたいと考えています。薬剤師のアドバイスは、自分の体質や状態、症状に合ったOTC医薬品を適切に使用する上で大いに役立つはずです。また、医師から処方される薬との重複利用による悪影響や、飲み合わせによる副作用なども防ぐことができます。特に、かかりつけの薬局や薬剤師を決めておけば、自分の体質に合ったアドバイスを受けられます。

【生活習慣病薬のスイッチOTC医薬品化】

 スイッチOTC医薬品とは、元来医療用医薬品として使われていた成分のうち、有効性や安全性などに問題がないと判断され、薬局で店頭販売できる一般用医薬品に転換(スイッチ)された医薬品のことをいいます。血液検査で脂質や血糖の軽度上昇が発見された場合、そのままにしておくと将来、脂質異常症や糖尿病など生活習慣病の発症リスクや、心筋梗塞や脳梗塞といったリスクも高まります。発症予防のため、薬局での採血結果なども参考としながら自分の今の健康状態を把握し、生活習慣の改善に努めると共に、スイッチOTC医薬品を上手に使用するのも一つの方法です。生活習慣病を対象とした日本初のスイッチOTC医薬品として、中性脂肪値を改善するイコサペント酸エチル(商品名:エパデールT)が2013年4月に発売されました。スイッチOTC医薬品の今後の候補として糖尿病治療薬のボグリボース等が挙がっており、スイッチOTC医薬品は近い将来、さらに増えるかもしれません。

【おわりに】

 寿命には平均寿命と健康寿命があります。平均寿命は寝たきりのような、日常生活に制限をきたす不健康な時期も含んだ数値であるのに対し、健康寿命は日常生活に制限が無い期間を示す数値となります。この平均寿命と健康寿命の差をできるだけ縮めていくことが、今後の大きな課題です。「健康寿命世界一」が掲げられ、治療中心の医療から、疾病予防や病気になる前の未病対策に向けたセルフメディケーションが推進されています。薬局で血液検査を行い、薬剤師による健康相談窓口を活用したセルフメディケーションを強化することで、生活習慣病等の発症予防のため、未病のうちから自身や家族の健康管理に積極的に関わっていきましょう。


2016年5月
慶應義塾大学薬学部 横山雄太