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健康豆知識

便秘について


【はじめに】

 お通じはいかがですか?“毎日、快調(快腸)です!”と宣言できる方は本当に素晴らしいです。お通じは不快感がなければ1日に2~3回あっても3日に1回でも構いませんが、毎日あってもスッキリしないとか、お腹のハリが残る場合は便秘の可能性があります。便秘には腸に何かしらの病気があることで起こる“器質性便秘”と、大腸や直腸の働きの異常により生じる“機能性便秘”があります。今回は “機能性便秘”についてお話をします。

【機能性便秘のタイプについて】

(1)弛緩性便秘:大腸を動かす筋肉が緩むとぜん動運動が弱くなり、大腸で多くの水分が吸収されてしまいます。その結果、便が硬くなってうまく送り出すことができなくなるタイプです。朝食を食べなかったり、運動不足や生活の乱れが原因です。高齢者、やせ型の女性、寝たきりなど体を動かす機会が少ない人がなりやすく、日本人の便秘の中で最も多くみられます。
(2)けいれん性便秘:ぜん動運動が強くなり過ぎて大腸にけいれんが生じ、便をうまく送り出すことができなくなるタイプです。ストレスの多い人、上手にリラックスすることができない人に多いです。排便時に腹痛があったり、最初はうさぎの糞のようなコロコロした小さい便しか出ないで、その後、下痢になったりと排便後もすっきり感がないこともあります。
(3)直腸性便秘:直腸に便が入っても直腸が緩んでしまうため排便の反応が起こらず、便秘になるタイプです。朝時間がなくてトイレに行けない、学校や職場のトイレでは恥ずかしくて排便を我慢したりする人は便意が消えてしまうことがあります。これが習慣化することにより便秘になります。
(4)薬剤性便秘:抗コリン薬(ぜんそくや頻尿、パーキンソン病など)、抗うつ薬、せき止め、麻薬(モルヒネ)などの薬の副作用で便秘になることがあります。
(5)このほか、甲状腺機能低下症などの全身の病気が原因で便秘になることがあります。また、神経損傷や糖尿病の合併症である神経障害で、神経の働きが不調になった場合も便秘になります。女性では黄体ホルモンに大腸のぜん動運動を抑制する働きがあるため、黄体ホルモンの分泌量が増える月経前に便秘になりやすくなる人もいます。

【便秘によるトラブルについて】

 腹痛やお腹のハリ、ぽっこりお腹、おならが臭いなら腸内に悪玉菌が増えて便やガスがたまっている証拠です。胃の働きも落ちてくるので、食欲も低下してしまいます。さらに骨盤内の血行が悪くなり、体全体の血行も悪くなるため、肩こり、腰痛、冷え、むくみ、だるさ、疲労感、肌荒れ、痔、不眠、イライラなどを感じることもあります。また、“出ない!”というストレスで余計に便秘がひどくなることもあります。

【便秘解消法について】

(1)生活習慣を見直す
朝食をしっかり食べて腸の働きをよくして余裕をもって排便する習慣をつけましょう。軽く汗ばむぐらいの運動は自律神経をリセットして腸の働きを整えたり、ストレスをコントロールする効果があります。また、自分に合ったストレス解消法を見つけ出すことも大切です。規則正しい生活を心がけましょう。
(2)食物繊維と乳酸菌で便秘を防ぐ
食物繊維は水分を吸収して便を軟らかくして便のかさを増やします。そして、腸を刺激してぜん動運動を活発にする働きがあります。海草類、豆類、いも類、根菜類、キノコ類、緑黄色野菜、果物、玄米、ライ麦パン等に多く含まれています。また、乳酸菌は腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整える働きがあります。ヨーグルト、みそ、醤油、ぬか漬け、キムチ等に多く含まれています。
(3)水分をしっかり補給する
1日1.5リットル以上を目安にたっぷりと補給しましょう。起床時に水か牛乳をコップ1杯飲むと腸が刺激されて動きがよくなり、便意が起こりやすくなります。

【下剤について】

 いくつかの種類がありますが最初から強い薬を使うのは避けてなるべく効き目が穏やかな薬から試すのがよいでしょう。ご自身の症状に合った下剤を医師に処方してもらうか、市販のもので迷ってしまうという方は薬局で薬剤師に相談するとよいでしょう。
(1)膨潤性下剤(バルコーゼ):食物繊維と同じように消化管内で水分を吸収して膨れ、便を大きくやわらかくし、便のかさを増やして無理なく排便を起こさせます。習慣性はないため長期間の使用ができます。特に軽症の慢性便秘には理想的な下剤です。
(2)塩類下剤(酸化マグネシウムなど):腸管の水分の吸収を抑えて便を軟らかくし、便のかさを増やすことにより腸のぜん動運動を促進します。比較的、穏やかな効き目です。習慣性はないため長期間の使用ができます。ただし、高マグネシウム血症の副作用に注意が必要です。
(3)刺激性下剤(ラキソベロン、コーラック、プルゼニド、アローゼンなど):腸のぜん動運動を活発にして腸の粘膜に直接作用することで排便刺激を与えます。作用は強いので症状の重い時に使用しますが、続けて使用すると習慣性が生じることと腸管粘膜に炎症が起こるので注意が必要です。適切に用いれば有用性が高い下剤です。
(4)浣腸(グリセリン):便が肛門近くに詰まった場合などに有効です。直腸の壁をすべりやすくして、直腸の粘膜を刺激して排便を起こさせます。

【おわりに】

 ひと口に便秘といっても原因や症状も人それぞれです。ご自身に合った対応方法を見つけて便秘にならないようにしたいものです。便秘になってしまった場合には、重症化しないように早めに治すことが大切です。なお、強い腹痛や吐き気、発熱がある場合や便に血が混じるような場合は早めに医師の診断を受けてください。


2013年10月
慶應義塾大学病院薬剤部 今井一美