2 ては、第一部のセッション1と2を振り返りながら、現在のキャリアにおける「課題」をリストアップした。また、議論の中で「課題」に対する「解決のアイデア」が出されたら併せて記載することとした。グループ討論の結果、「ロールモデル不足(不在)」、「不安定で不確実なキャリア(就職先、任期、給与、休職・転職など)」、「ワーク・ライフ・バランス」、「大学院博士課程在学時の経済的負担」、「臨床と基礎の連携不足」、「臨床で働く薬剤師にとっての研究時間確保」などの深刻な課題があげられ、解決のためのいくつかのアイデアが提案された。とくに「ロールモデル不足(不在)」に対しては、「自分たちがロールモデルとなる」という主体的で心強い解決策が提示された。 第三部は「博士を取得した私たちがもつ未来の可能性」をテーマとし、参加者にキャリアプランについて考える機会を提供した。まず、キャリアに関する理論の一例として「計画的偶発性理論 Planned Happenstance Theory」を紹介した。作業としては、10年後に「誰の」、「どんな課題」の解決に取り組んでいる可能性があるかをグループでリストアップした。続いて、各個人が自身の未来を選択し、3~4年後、6~7年後、10年後のキャリアを考え、これをプランAとした。また、プランAとは別の未来を選択し、同様に10年後までのキャリアを計画し、これをプランBとした。グループのメンバーのプランAとプランBを共有した上で、発表は代表的なプランを紹介することとした。第三部のプロダクトとして、参加メンバーのビジョンを反映した種々のプランAとBが提示され、参加者にとって博士取得者のキャリアの多様性と未来の可能性を確認する貴重な機会となった。 第二部と第三部の各グループのプロダクト、およびワークショップ終了後に実施した事後アンケートの結果を本報告書にまとめたので、博士取得者の支援や進路相談の参考にしていただきたい。 最後に、休日にも関わらず本ワークショップに参加し、各テーマについて熱心に協議しプロダクトをまとめた参加者各位に心から敬意を表する次第である。日本薬学会薬学教育委員会は本ワークショップのプロダクトとアンケート結果に基づいて、2023年度から具体的な活動を展開していく予定である。 2023年1月 日本薬学会薬学教育委員会委員長 中村明弘
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