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過去のハイライト

 新年明けましておめでとうございます。日本薬学会会員の皆様におかれましては、新たな目標を持って新しい年を迎えられたことと存じます。

 さて、我が国では、昨年も経済の不況や不安定な政治状況が続き、明るい話題に乏しい1年でした。そのような中、社会を大きく明るくしたのは、iPS細胞を樹立された山中伸弥教授のノーベル生理学・医学賞受賞のニュースでした。山中教授の輝かしい業績は、我が国のライフサイエンスのレベルの高いことを世界に示すとともに、軽視される傾向にある基礎研究の重要性を再認識させ、理科離れが危惧されている若者には科学へチャレンジすることの素晴らしさを力強く訴えるものでした。薬学の研究者や学生にも大きな励みを与えるものであったことと思います。

 我が国の薬学にとって、昨年は6年制薬学教育を受けた第1期生が誕生し、社会に巣立っていった記念すべき年でした。新しい形態の薬剤師国家試験も順調に行われ、6年制薬学教育は次のステップに入りました。薬学会では、第2回目となる「薬学教育者のためのアドバンストワークショップ:学習成果基盤型教育(Outcome-Based Education)に基づいて6年制薬学教育の学習成果を考える」と「全国学生ワークショップ:6年制薬学教育に望むこと、卒業後に取り組んでいきたいこと」を開催し、今後の6年制薬学教育の一層の発展に向けて、教員と学生それぞれの立場から活発に議論されました。このようなワークショップはこれからも継続されることを期待します。また、薬学会では、文部科学省の委託を受けて、薬学教育モデル・コアカリキュラムおよび実務実習モデル・コアカリキュラムの改訂作業も進めてきており、全体をスリム化する方向で、平成26年度からの採用を目指し、検討されつつあります。4年制と6年制が共存する我が国の薬学教育は未だ様々な課題を抱えており、薬学会はこれからも薬学教育委員会を中心に教育改革に取り組みます。

 薬学教育とともに薬学研究の活性化も薬学会の重要な課題です。6年制薬学教育の導入により、教員の仕事量が増大して研究時間が減少し、長期実務実習のために学生の卒業研究時間が十分確保できないなど、研究環境の悪化が顕在化しております。研究の活性化対策として、薬学会年会や支部・部会での活発な学術活動が求められますが、大学での努力により、支部や部会での研究発表において6年制学部学生の発表も数多く見られました。これからも支部と部会が一層活発な活動ができるよう支援し、薬学研究の活性化に取り組みます。平成24年度からは多くの大学で4年制の博士課程がスタートしましたが、ここでの研究活動の成否が今後の薬学研究の発展を左右することは間違いありません。動き出した4年制博士課程を発展・成功させるために薬学会としても幅広い対策を考えねばなりません。

 薬学教育委員会では薬剤師の生涯研鑽に取り組んでおり、来る3月開催の薬学会年会では、薬学会、薬剤師会、病院薬剤師会の合同により、「オール薬学」を謳って、生涯研鑽をテーマとするシンポジウムを開催する予定です。また、薬剤師の生涯研修については、薬剤師研修センター、薬学会、薬剤師会、病院薬剤師会が共同で取り組むことも具体化されつつあります。これらを機に今後益々必要となる薬学関連学会の連携が一層促進されることを期待します。

 私に残された任期の3ヶ月間も、学術活動を支えることを使命とする薬学会が一層の発展をするよう尽力する所存です。会員の皆様のご協力を賜りますよう、切にお願い申し上げます。

 末筆ながら、会員の皆様にとりまして、実り多き年となるようお祈り申し上げます。