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今月の薬草
ヤマユリ
Lilium auratum Lindley ( ユリ科 )
ヤマユリ Lilium auratum Lindley (ユリ科)花 ヤマユリ Lilium auratum Lindley (ユリ科)実

ヤマユリ Lilium auratum Lindley (ユリ科)鱗茎
鱗茎
 本州以北に分布し,日当たりのよい山野に生育する日本特産種の多年生草本植物です。観賞用にも栽培されています。鱗茎は扁球茎で黄白色,草丈は1〜1.5mになり,葉は披針形で多数ついています。花は白色でやや反り返り,赤褐色の斑点と中央に黄色いバンド状の筋を生じ,茎の上部について夏に咲きます。因みに学名(種小名)のauratumは黄金色を意味していますが,これは黄色い筋に由来しています。花の直径は20cm以上にもなり,ユリの仲間では最も大きな種の一つです。「ユリの女王」と称される園芸品種のカサブランカは,ヤマユリの他,カノコユリなど数種のユリを交配させオランダで育種されたものです。果実は楕円状で,種子は翼があり薄い円盤状です。
 和名は生育地に由来し,山野に生育しているユリを意味しています。薬用には鱗茎を用います。しかし本来の茎は肉厚の鱗片葉の基部に生じる少し硬い部分になり,生薬や食用として利用する場合は肉厚の鱗片葉を用います。生薬名をビャクゴウ(百合)といい,鎮咳や鎮静,滋養・強壮薬とします。また鼻づまりや鼻炎などの改善を目的とした辛夷清肺湯などにも配剤されています。その他,苦味が弱いために昔からユリ根と呼び,茶わん蒸しなど各種料理の食材として利用されてきました。
 「立てば芍薬,座れば牡丹,歩く姿は百合の花」といわれているように,花は大変美しいことから美人の例えとしたものです。この様にユリは昔から身近な植物の一つとして親しまれていますが,最近,ヤマユリが生育している草原などは,生態的な遷移からかなり減少してしまいました。そのため各地で生育環境を保護しようという運動が行われています。神奈川県では過去に広く分布,生育していたことから,県の花に指定しています。その他,花を図案化して多くの学校で校章に採用していますので,懐かしく思い出された方もいらっしゃるのではと思います。因みに筆者らの所属する昭和大学でも,校章はヤマユリの花を図案化しています。(磯田 進・鳥居塚 和生)

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