|
イカリソウ
Epimedium grandiflorum Morren var. thunbergianum Nakai
(
メギ科
) |
|
主に日本の太平洋側に分布し,夏緑広葉樹林の林床や林縁などに生育している多年生草本植物です。根茎は太く,地上茎は細くしばしば叢生します。草丈は20〜40cmです。葉は1-3回3出複葉で,各小葉は薄く紙質,基部が心形で先端が尖り少し変形したハート形をしています。花は赤紫色または白色で花弁は4枚,各花弁には細長く突き出た距があり,花茎に総状について春に咲きます。この仲間の中では,比較的大きな花をつける植物です。果実は細長く袋状となります。種子にはエライオソームと呼ばれる付属体がついていますが,このエライオソームはアリが好む脂肪酸やアミノ酸などを含んでいます。そのためアリは餌としてこれを巣など遠方に運びます。食べ残した種子は捨てられ、その結果としてイカリソウの分布域が広がっていくことになります。
和名は花の形が船の錨に似ていることから名づけられました。また葉は前述のように1-3回3出複葉であるととこから,別名をサンシクヨウソウ(三枝九葉草)ともいわれています。薬用には葉が十分に成熟した地上部を用います。生薬名をインヨウカク(淫羊霍)といい,強壮や抗うつ薬などに用います。薬用には本種の他,キバナイカリソウやトキワイカリソウ,中国原産のホザキイカリソウなども利用します。
和名の語源となった錨,おそらく多くの方々は大型船が使用している鉤が2本の錨を思い浮かべるに違いありません。ましては若い人はなおさらでしょう。この錨は鉤で海底の岩などに引っかけて固定するだけではなく,その重量に問うところ大と思われます。イカリソウという和名が使わるようになった時代は定かではありませんが,かなり昔のことだと思われます。その当時は,現在のように大型船などの建造や製鉄技術が発達していた訳でもありません。小型の木造船に必要な錨といえば,釣り針に似た鉤状のものを数本束ね,海底の岩などに引っかけて停泊する錨で十分です。従って少し変わった花の形を,その当時使用されていた錨に見立てたとはいうまでもありません。なお、インヨウカク(淫羊霍)の語源については「本草綱目」に“淫した羊あり。この霍(つぼみ)を食べたために、一日百遍合す”と記載されています。(磯田 進・鳥居塚 和生)
< 戻る
|
|
|