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今月の薬草
オリーブノキ
Olea europaea Linne ( モクセイ科 )
オリーブノキ Olea europaea Linne (モクセイ科)果実 オリーブノキ Olea europaea Linne (モクセイ科)花
果実

オリーブノキ Olea europaea Linne (モクセイ科)老木
老木
 地中海沿岸原産と推測されている常緑小高木です。オリーブ油や食材として現在のシリア地方では紀元前3000年頃には栽培されていたといわれ,現在では世界各地で栽培されています。日本へは江戸時代末期の文久年間(1861-63)に渡来し,明治時代に入って比較的乾燥した香川県の小豆島で栽培が成功し,その後,瀬戸内海周辺でも栽培されるようになりました。また常緑でやや耐寒性があり乾燥にも強いことから,最近では関東以西では庭木として植栽されることが多くなりました。樹高は10〜15m,葉は対生し,葉身は長さ5〜10cmの長楕円形,革質で上面は濃緑色,裏面は白銀色の毛が密生しています。花は淡黄白色で小さく,初夏に咲きます。果実は楕円状で晩秋から冬にかけて黒紫色に熟します。因みに塩漬けやピクルスとして利用する場合には,果実の表面が緑黄色の完熟前が適期とされています。一方,オリーブオイルの採油を目的とする場合は,表面が黒紫色になった完熟した果実がよいとされています。
 和名は英語名のoliveに由来しています。薬用には果実から採油した脂肪油を用います。生薬名をオリーブ油といい,軟膏や硬膏の基剤として薬用には利用されます。また食用油、化粧品や石鹸の素材など広範囲に利用されています。オリーブ油は気温が10℃以下に低下すると固形分が析出するため,加温して完全に液状化した状態で使用します。最近,オリーブオイルが健康によいということで,食品として摂取することが多くなってきました。しかしカロリーの観点からは他の油脂と大差はありません。健康によいからといって盲目的に多量に用いることは,過剰なカロリー摂取となり健康を損なう可能性があることは念頭におく必要があります。
 オリーブは古代遺跡の壁画にも描かれ,神話にも度々登場するほどヨーロッパでは日々の生活に溶け込み,平和のシンボルとしてヨーロッパの人たちだけではなく多くの人に親しまれています。オリーブの花言葉は“平和と知恵”といわれています。そのため国際連合のシンボル旗にもオリーブの葉が世界(地図)を囲むように描かれています。これは国際連合が戦争のない平和な世界を願って設立された思いを象徴しています。しかし残念ながら現実は、まだその願いとはほど遠いところかもしれません。「平和」な世界に向かって「知恵」を出し合うことで、オリーブの花言葉の思いが叶う日が来ることを願わずにはいられません。(磯田 進・鳥居塚和生) 

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