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今月の薬草
ステビア
Stevia rebaudiana Hemsl ( キク科 )
ステビア Stevia rebaudiana Hemsl (キク科)花 ステビア Stevia rebaudiana Hemsl (キク科)葉
 パラグアイ原産の多年草で,マテ茶などの甘味料として利用されていました。その後,甘味料として各国で導入されるようになってきました。全株,特に葉には強い甘味があります。日本へは1970年に甘味資源植物として導入されたのが最初といわれています。草丈は1mくらいなり,全株白色の軟毛が密生しています。葉は対生していますが,上部では互生することもあります。葉身は鋸歯があり楕円状で先端はやや尖り,基部は細くなって茎につきます。花は筒状で白色,枝先に多数つけ秋に咲きます。果実は大変小さく,萼が変化した白色の冠毛を生じています。本植物は自家不和合といって同じ花の雄しべと雌しべの間では結実しにくいという特性があります。そのため親植物の形質と異なる雑種が生じやすく,栽培上,優良品種の系統保存が大変難しい植物でもあります。
 和名は学名(属名)のSteviaをそのまま用いたものです。ステビアの仲間はおよそ100種が知られていますが,甘味が強いことから別名をアマハステビアともいいます。因みにSteviaとは,スペインのバレンシア大学教授で植物学者であり医師であったPedro Jaime Esteve (1500-56)に因んで名づけられました。甘味成分は砂糖の200〜300倍の甘味が感じられるといわれていますが,あまり高濃度では甘味より反対に苦味を感じてしまう欠点があります。また甘味成分は開花前が最も含有率が高く,開花すると低下してしまいます。
 この植物を初めて目にしたのは40年以上も前のことです。当時の国立衛生試験所春日部薬用植物栽培試験場(現医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター筑波研究部)では,導入後間もないステビアの試作栽培が行われていました。栽培はまだ試行錯誤を繰り返している段階にあり,栽培技術の確立や品質評価などはこれからといった状態でした。勧められるままに,試作栽培されている株から一枚の葉を頂き恐る恐る口にしました。口に入れ噛んだ途端,とても強い甘味を感じたことを今でも鮮明に思い出します。担当の故・西孝三郎博士は,今後は食品添加物の一つとして多方面で利用されるだろうと説明されていました。説明頂いた通り,その後は甘味料として添加された食品を目にすることが多くなりましたが,当時は現在のように多方面で利用されるようになるとは想像すらできませんでした。(磯田 進・鳥居塚 和生)

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