社団法人日本薬学会 The Pharmaceutical Society of Japan 日本語 English
サイト内検索 byGoogle

今月の薬草
ムクゲ
Hibiscus syriacus Linne ( アオイ科 )
ムクゲ Hibiscus syriacus Linne (アオイ科)ムクゲ ムクゲ Hibiscus syriacus Linne (アオイ科)フヨウ
ムクゲ フヨウ

ムクゲ Hibiscus syriacus Linne (アオイ科)スイフヨウ
スイフヨウ
 中国原産といわれる落葉低木です。樹高は3mくらいで,よく分枝します。日本へは奈良時代(715-806)ころに,薬用植物として渡来したものと推測されています。樹皮は繊維が発達しているため,かつては製紙の補助材として利用していました。葉は卵形で,浅く3つに切れ込んでいます。花は夏に咲き,紅紫色から白色,八重種など園芸的にも多くの品種が育成されています。花は早朝より開花し,夕方には萎んでしまうことから一日花といいます。しかし花は次から次へと毎日,新たに咲き続けますので,株全体では長期間楽しむことができます。華やかな花は大韓民国の国花にも指定されています。韓国では白色の花が特に尊ばれているようですが,日本でも夏を代表する花木として栽培されています。雄しべは単体雄ずいといい,ツバキの花と同じように雌しべの周囲に多数の雄しべの柄(花糸)が合着しています。果実は卵球状で熟すと上部が五つに裂け,種子は薄いハート形をして周囲に茶褐色の毛を生じています。
 和名は漢名,木槿の音読み「もくきん」から転訛したといわれています。花は前述のように早朝より開花し,夕方には萎んで落花してしまうことから,別名を朝開暮落花ともいいます。そのためでしょうか。花の開花特性から「秋の七草」のアサガオは,本種という説もあります。薬用にはつぼみおよび樹皮を用います。つぼみは生薬名をモクキンカ(木槿花)といい,止瀉や鎮吐薬とします。また樹皮は生薬名をモクキンピ(木槿皮)といい,水虫やタムシなどに用います。
 よく似た花にフヨウ(H. mutabilis)があります。ともにハイビスカスの仲間のため,勘違いされている方も多いようです。ムクゲの花は直径が10cmくらいですが,フヨウは一回り大きく10〜15cmくらいになり,少し遅れて夏から初秋にかけて咲きます。また葉は花同様に大きく,浅く掌状に裂けて葉の基部が心形となっていることなどで見分けることができます。中には夕方になるとお酒を飲んだように花が淡紅色を帯びる園芸品種もあり,スイフヨウ(酔芙蓉)という粋な名前で親しまれています。(磯田 進・鳥居塚 和生)

< 戻る

公益社団法人日本薬学会 (The Pharmaceutical Society of Japan)
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷 2-12-15 お問合せ・ご意見はこちらをクリック