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今月の薬草
クコ
Lycium chinense Linne ( ナス科 )
クコ Lycium chinense Linne (ナス科)果実 クコ Lycium chinense Linne (ナス科)花
果実

クコ Lycium chinense Linne (ナス科)刺
クコLycium chinense Linne(ナス科)

 中国原産で,日本など東アジアなどに分布し,日当たりのよい河川の土手や原野などに生育している低木性の夏緑広葉樹です。暖かい地方では冬でも葉をつけたままでいます。昭和40年代にクコが大きなブームになったことがありました。そのため家の庭などで栽培したり,先を争うように野生のクコを採取して利用しました。ご記憶の方も多いのではないでしょうか。樹高は1〜2m,茎は細くてよく枝分かれし,枝が変化した長さ1〜2cmの刺を生じます。また枝が土壌に接すると各節より根を生じ新たな株となります。葉は数枚束生し,葉身は披針形から倒披針形で柔らかく,短い柄をつけています。花は短枝に生じ,淡紫色を呈しています。花冠は先端部分が5裂して平らに開き,夏から初秋にかけて咲きます。果実は楕円形で長い柄をつけ,果汁に富んで甘みがあり,晩秋から初冬にかけて美しく紅熟します。
 和名は漢名の枸杞を音読みにしたものです。因みに枸杞の「枸」とはカラタチを意味し,枝に生じる刺に由来しています。また細い枝をヤナギ(杞)に例えて名づけられました。薬用には葉および果実,根皮を用います。生薬名は葉をクコヨウ(枸杞葉),果実をクコシ(枸杞子),根皮をジコッピ(地骨皮)といい,ともに滋養,強壮薬とします。また柔らかい若葉は,おひたしやご飯に混ぜて枸杞飯に,葉は健康茶として利用します。
 近年,健康は最大の関心事の一つとなっています。中でも薬食同源といわれていますように,食と健康は切っても切れない関係にあり,充実した生活を過ごす源は食事にあるという薬膳に注目が集まっています。この「薬膳」という言葉は比較的新しく,1980年代に北京のレストランで用いられたのが最初といわれていますが,その発想は今から3,000年の昔,皇帝の食事にまで遡るといわれています。そのような皇帝の食事の歴史や理論は難解なものもあり,私たち庶民にとっては,容易に受けいれることができるものばかりではありません。しかしながら家庭でも簡単に作れるクコの実をお粥やスープに入れた薬膳は手軽でもあり,様々な工夫ができ,味も良いことから人気があるようです。このような薬膳を食べただけで,病気が治ったり健康が維持できるわけではありませんが,身近な食材を上手に使うことにより,食卓から自分自身の健康を見直そうという考えを常に持つことこそが大切であり,健康への第一歩といえるのではないかと思います。(磯田 進・鳥居塚和生)

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