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今月の薬草
カギカズラ
Uncaria rhynchophylla Miquel ( アカネ科 )
カギカズラ Uncaria rhynchophylla Miquel (アカネ科)花 カギカズラ Uncaria rhynchophylla Miquel (アカネ科)花

カギカズラ Uncaria rhynchophylla Miquel (アカネ科)鉤のつき方
鉤のつき方
 房総半島以南の本州,四国,九州から中国大陸に分布し,やや湿り気のある林縁などに生育する常緑のつる性木本植物で水平に10m以上伸長します。若い茎の横断面は四角身を帯びています。葉は対生し,成長すると無毛になります。葉身は楕円状で表面は光沢があり,裏面は粉白色を帯びています。通常は各節には茎が変化した鉤(刺)を生じますが,2個ついている節と1個ついている節が交互になっています。つる状の茎は,この鉤(刺)を他物にひっかけながら伸長します。また托葉は深く裂けて先端がとがり,成長とともに落下してしまいます。花は葉の基部より生じる長い柄の先端に径2〜3cmの球状につき,6〜7月に咲きます。花冠は緑白色で浅く5裂し,基部は淡赤褐色を呈しています。また雌しべは,先端が棍棒状となり花冠の外へ長く出ています。果実は長さ5mmの楕円状で,晩夏から秋に熟します。
 和名は鉤で這い上がりながら伸長するつる性の植物より名づけられ,鉤蔓を意味しています。薬用には通常は鉤(刺)を用いるとされますが,含有成分の面から見ると茎の部分にも多く含まれているので,鉤(刺)がついた茎の部分が実際には薬用に用いられています。昔は鉤(刺)が2個ついている部分に効果があり,1個は効果がないと信じられてきましたが,効果については差がありません。生薬名をチョウトウコウ(釣藤鉤)といい,和名同様に釣り針のような鉤を生じるつる性の植物を意味しています。頭痛やめまい,肩こりなどを伴う高血圧症の改善を目的とした七物降下湯や釣藤散などの漢方処方に配剤されています。また最近,脳血管障害による痴呆症の改善に釣藤散が有効という研究結果が報告され注目を集めています。但し有効成分は熱に対して少し不安定であるため,長時間煎じるとその効果が減少することが報告されています。
 重要な薬用植物ですが,明るい環境を好むために森林を伐採した跡地などに最初に侵入するいわゆる先駆植物の一種でもあります。そのため自生地ではその旺盛な生育と鋭い鉤(刺)などにより,あまり歓迎されていません。そのためか市場品のほとんどは輸入に頼っているのが現状です。生活習慣病が大きな社会問題となり,また高齢化社会にあっては,チョウトウコウ(釣藤鉤)を配剤する漢方処方が益々有用になると思います.将来的な生薬の供給の不透明さが取りざたされていることと相俟って,今後は迷惑がらず資源的な面からも大いに活用したい薬用植物の一つでもあります。(磯田 進・鳥居塚 和生

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