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今月の薬草
シナニッケイ
Cinnamomum cassia J.Presl ( クスノキ科 )
シナニッケイ Cinnamomum cassia J.Presl (クスノキ科)シナニッケイ(実) シナニッケイ Cinnamomum cassia J.Presl (クスノキ科)セイロンニッケイ(花)
シナニッケイ(実) セイロンニッケイ(花)

シナニッケイ Cinnamomum cassia J.Presl (クスノキ科)ニッケイ(花)
ニッケイ(花)
 別名をカシアといいます。中国原産の常緑高木。中国南部やベトナム北部などで栽培されています。日本では薬用植物園などの温室で展示用に植栽されています。全株に特有の香りがあり,特に樹皮は強い芳香があります。樹皮は灰褐色,緑色を呈する若い枝は四陵があります。葉は互生し,葉身は光沢があり広披針形で有柄,基部より生じる3本の葉脈が目立ちます。花は小さく黄緑色で径1cmくらい,枝先に円錐状に多数つけ5〜7月に咲きます。果実は楕円形で肉厚,翌年の2〜3月に黒紫色に熟します。
 和名は中国に産する肉桂という意味があります。肉桂は享保年間(1716-35)に中国より渡来したC. sieboldii (ニッケイ)のことを指します。しかし本来であれば,“肉桂”の名称はカシア(C. cassia)に付けられるべきものでありました。C. sieboldii が渡来した当時に,誤って肉桂と名づけられ,それが定着してしまったのです。カシアという名称は,英語名のCassiaをそのまま読んだものです。
 薬用には幹の太い部分から採取した樹皮を用います。生薬名をケイヒ(桂皮)といい,発汗・解熱,鎮静・鎮痙を目的とした葛根湯などに配剤されています。若く細い枝はケイシ(桂枝)といい,ケイヒより穏やかな薬効があるといわれています。また葉を水蒸気蒸留した精油は,カシア油(桂枝油)として芳香性健胃薬やお菓子などの香料に用います。
 クスノキ科植物は精油を含んでいることが多く,中でもシナニッケイの仲間はその香りから薬用や香料として珍重されてきました。近縁のセイロンニッケイ(C.zeylanicum)や中国南部や台湾原産で辛味の強いニッケイ,別名ニッキ(C. sieboldii)は薬用としては品質が劣るため日本薬局方には収載されていません。しかしセイロンニッケイは,シナニッケイと比較しやや甘味があるため,シナモンという名称で,お菓子など食品の香りづけに用いることが多いようです。一方ニッケイは,樹皮の香りは弱くあまり利用価値はありませんが,根の皮はやや香りがあり,また辛味が強く,京都名物の「八つ橋」などの風味づけとして利用されてきました。これは比較的耐寒性があるため,入手しやすかったことによるのでしょう。最近では市場に出回る量が極端に少なくなり,入手が困難になりつつあるようです。(磯田 進・鳥居塚 和生)

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