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今月の薬草
アズキ
Vigna angularis Ohwi ( マメ科 )
アズキ Vigna angularis Ohwi (マメ科)花 アズキ Vigna angularis Ohwi (マメ科)果実(莢)
果実(莢)

アズキ Vigna angularis Ohwi (マメ科)ササゲ−花・果実
ササゲ−花・果実
 東アジア原産の一年生草本植物です。現在栽培されているアズキは,日本にも自生している野草のヤブツルアズキから品種改良されたと考えられています。中国の本草書である「神農本草経」にも記載されていることから,栽培種として中国で改良されたものと推測されています。縄文遺跡から出土され,また「古事記」にも記載されていますので,日本へは3〜8世紀の頃に渡来したようです。各地で食品の素材として栽培され,また中国などからも輸入されています。草丈は30〜70cm,株全体に茶色い短毛を生じています。葉は互生し,葉身は小葉が3枚の3出複葉です。花は黄色で夏に咲きます。果実(莢)は,長さ5〜10cmの細長い円筒形で下垂します。多くの品種の種子は,いわゆるアズキ色の暗赤色に熟しますが,中には黒や白,黄緑色などに熟す品種もあります。
 和名の語源は定かではありませんが,平安時代に編纂された本草和名(901-923)には阿加阿都岐(アカアツキ)と記載されています。また江戸時代には赤小豆をアカツキと読ませているものもあり,また赤粒木(アカツブキ),赤粒草(アツキ)などとも書いていたことから,それが訛ってアズキになったといわれています。薬用には種子を用います。生薬名をセキショウズ(赤小豆)といい,利尿,消炎,緩下薬などに用います。しかし薬効が期待される成分は食用とする餡などには含まれておりません。そのほとんどは調理や製造の過程で生じるいわゆるアクである煮汁に溶出されてしまいます。従ってお汁粉やぜんざい,お萩(牡丹餅)をいくら食べてもその効果は期待できそうにありません。
 豆類の多くは,煮込料理やスープなどの食材として利用します。しかしアズキはやや苦みがあるため,豆類を煮込み料理やスープとして利用する食文化圏では,あまり利用されていないようです。一方,日本では,水に一晩浸してから煮出して,苦みなどのアクをある程度除去させた後,砂糖を加えて甘くしてから利用するという工夫が生まれました。また,もち米や少量の白米に,一晩水に浸したアズキを混ぜた赤飯をお祝い事などの「ハレ」の食事として利用しています。とはいえ最近では「ハレ」の席に限らず,その風味や色合いからコンビニなどではおにぎりの人気の定番としての利用の方が増え一般的になってきたようです。様々に利用されるアズキですが,欠点としては調理の過程で胴割れを起こしやすく,見た目が悪くなるということです。そのためよく似たササゲ(まったくの別種:Vigna unguiculataです)を利用しているご家庭も多いということです。(磯田 進・鳥居塚和生)

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