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今月の薬草
アキカラマツ
Thalictrum minus L.var. hypoleucum Miq ( キンポウゲ科 )
アキカラマツ Thalictrum minus L.var. hypoleucum Miq (キンポウゲ科)花 アキカラマツ Thalictrum minus L.var. hypoleucum Miq (キンポウゲ科)花
 全国各地に分布し,日当たりのよい山野や丘陵地などに普通に生育する多年生草本植物です。全株に苦味があり,特に地下部の内部は黄色を帯びて強い苦味を生じます。草丈は1m以上にもなり,上部ではよく枝分かれをします。葉は互生し,葉身は2〜4回3出複葉で各小葉は円形から広卵形,先端は3〜5浅裂して基部は丸味を帯びています。葉柄の基部に生じる托葉は,縁が波状に尖る鋸歯を生じています。花は径8mmくらいで小さく,淡黄白色で長い雄しべが目立ち,茎の先端に円錐状に多数つけて夏から秋に咲きます。また花は花弁が退化し,萼片が楕円状で3〜4枚あり花弁状となっています。しかしこの萼片は,開花後暫くすると落下します。果実は長さ4mmくらいの狭倒卵形で,果柄はありません。
 和名は秋唐松の意味があり,白色の花をつけるカラマツソウに対し,秋に淡黄白色の花をつけることから名づけられました。このカラマツソウは,長い雄しべをカラマツの葉に見立てて名づけられました。別名をタカトウグサ(高遠草)ともいいますが,かつて長野県の中部に位置する高遠町(現伊那市)周辺で民間薬として用いられたことに由来しています。薬用には開花期の地上部を用い,細断後,日当たりのよいところで乾燥させ健胃薬や止瀉薬とします。またアイヌの人たちは果実のことをアリッコといい,直ぐに機嫌が悪くなり,ぐずり易い子どもなどのいわゆる「かんの虫」といわれる症状に用いたということです。
 キンポウゲ科の花はアキカラマツだけではなく,花弁や萼片が一般的な花とは異なった種類が多く大変おもしろいグループの一つです。例えばクリスマスローズやクレマチスなどの仲間は,観賞用に育成された園芸品種だけではなく,原種や同じ仲間の野生種であっても萼片がまるで花弁のように見栄えのする大きい萼片をつける花もあります。因みに本来の花弁は萼片の内側に生じ,とても小さくあまり目立ちません。特色ある雄しべや,花弁のように変化した萼片をつけた花の構造は,受粉を助ける昆虫と密接な関係にありますが,飛来を誘引させるような仕組みと植物の進化の過程にとても興味が湧いてきます。(磯田 進・鳥居塚和生)

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