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今月の薬草
トウガン
Benincasa cerifera SAVI ( ウリ科 )
トウガン Benincasa cerifera Savi (ウリ科)雌花 トウガン Benincasa cerifera Savi (ウリ科)雄花
雌花 雄花

トウガン Benincasa cerifera Savi (ウリ科)果実
果実
 インドから中国南部原産の一年生草本植物です。日本へは古い時代に中国より渡来しました。野菜として10世紀ころから栽培が行われたといわれ,生育が旺盛なことから栽培に比較的労力を必要としないため,全国各地に普及したようです。茎はつる性で太く枝が変化した巻きひげをつけ,株全体に白色の短い毛を多数生じています。葉は心臓形で掌状に5〜7つに浅く裂け,基部は心形となっています。花は黄色で葉腋より生じ,雄花と雌花を別々につけて夏に咲きます。果実は長さ30〜50cm,球状から楕円状で完熟すると表面に蝋質の白粉を析出してきます。そのため学名の種小名にワックスを意味する ceriferaがつけられました。
 和名は漢名の冬瓜を音読みしたもので,それが転訛してトウガンになりました。反対にそのまま発音したトウガは別名とすることが多いようです。果実は保存性に優れているため,冬季まで利用できることから漢名に「冬」の漢字が用いられました。また果実の表面に見られる蝋質の白粉を霜に例えて名づけられたともいわれています。一方,別名にカモウリということもありますが,これは未熟な果実に生じる白毛をカモの羽毛に見立てたものです。薬用には完熟した種子を用います。生薬名をトウガシ(冬瓜子)といい,大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)などの漢方処方に配剤されています。その他,民間薬として解熱や消炎,鎮咳,緩下などに用いています。
 果実は昔から食材として利用しています.水分が多いですが,淡白な風味に滋味があり,煮物やスープなどの具材として利用することが多いようです。またとても消化がよく,胃の調子が悪い時などは胃に負担があまりないところから,病後の回復に適した食材としても利用されています.似たものとしてウリ科の植物にユウガオがあります.ユウガオは北アフリカが原産で,ヒョウタンと同じ仲間になり,花は白色で夕方より咲きだします。地方によっては,このユウガオをトウガンと呼んでいるところもあり,トウガンと同様な料理に用います。因みにユウガオの果肉を薄くひも状に削ぎ,乾燥させたものがカンピョウとなり栃木県の名産になっています。 (磯田 進・鳥居塚和生)

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